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デタラメ幸福論(主人公とヒロインがいちゃつきつつ能力バトルとかするだけ)  作者: 赤石アクタ
第三章 見世物小屋編

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第三十四話 鏡の内側

──鏡の内側。アカネ、ヒビキ、ジェイソン──




「──うわあぁぁッ!?!?」



──鏡が繋がっている先は『空中』だった。


⋯⋯ということはつまり、向こうから見た場合は鏡が宙に浮いているように見えるのだろうか⋯⋯?


 まぁ何にせよ、そういった事情で今は見知らぬ空中を自由落下している⋯⋯という訳だった。


 橘が呑み込まれた時も同じ状況だったとすると、彼女もこの高さから落下したことになるのだが、先輩曰く『ヴィクトリアがいるのならこの程度の落下は問題ない』らしい。


 しかし⋯⋯



「お、おれっ⋯⋯俺達は大丈夫なのかこれっ!?」


「ッ⋯⋯アカネ、もっとこっちに寄って!私の能力で地面まで移動するから!失敗したら肉体が分離するわよ⋯⋯!」


「なにそれこわっ!?お前いつもそんなリスクを背負って能力使ってたのか!?すげぇよ流石ヒビキ!」


「っ⋯⋯ありがとう⋯⋯っ!でも静かにして!集中、するから⋯⋯っ!」



 わーぎゃー言い合いながら落下している絵面はシュールかもしれないが、ヒビキは全員を無事に着地させるための調整に手間取っている様子だった。


⋯⋯いざとなったら、俺がクッションになろう。



「──うーん、流石に三人を能力で運ぶのは大変なんじゃない?」


「⋯⋯え?」



 ただ一人自由落下にテンションを上げていたジェイソンが、唐突に話に加わってきた。



「やっぱり私は自分で着地するよ。二人なら何とかなるでしょ?」


「え?いや何を言って──」


「──すぐ合流しようねー!!」



 ジェイソンは楽しそうな歓声を上げて俺達から離れる。



「なっ、なんだあの人!?」


「ッ⋯⋯アカネ、もっとくっついて!二人なら、いける⋯⋯!」



 ジェイソンの奇行にドン引きする俺を抱き寄せ、ヒビキが武器を構えた。



「──着地するわ⋯⋯!」




──────────────────




「⋯⋯何とか、なったのか⋯⋯?」



 大の字になって空を眺めながら、俺は呟いた。


⋯⋯空中から落下地点までの空間をヒビキの能力で斬り裂き、落下の勢いを殺して座標を誤魔化した⋯⋯いややめよう。どうせ考えても分からないし。


 落下中のヒビキは座標の調整に苦労していた様子だったが、最終的には怪我ひとつ無く着地に成功した。手首から伸ばした血液の糸が途切れた様子も無い、つまり扉は未だ空中に存在しているのだろう。



「⋯⋯」



 行きに比べれば、地面から投擲を行う帰りの方がヒビキの負担も少ないだろうか⋯⋯?


 彼女の能力は未だよく理解できていないが、なんとなくそう感じた。


 ところで⋯⋯



「⋯⋯あの、ヒビキ⋯⋯?大丈夫か⋯⋯?」



⋯⋯今の体勢は、少し大変だった。


 寝転がるように倒れた俺に対して、ヒビキが上から覆い被さるように抱きついているのだ。


 強い力で抱きしめられ、当のヒビキはぎゅっと目を瞑っている。彼女は耳を俺の胸に押し当て、何故か心音を確かめている様子だった。



「ッ、ヒビキ⋯⋯!?もしかしてどこか怪我を──」


「──アカネは⋯⋯っ!」



 最悪の想像が頭をよぎったタイミングで、抱きしめる力がさらに強くなる。



「⋯⋯アカネは、怪我してない⋯⋯?」


「⋯⋯え?」



 声を震わせるヒビキは、怯えたように強く目を瞑っていた。



「⋯⋯」



⋯⋯彼女が病院で不安を吐露した姿を思い出す。



「⋯⋯傷一つないよ、ヒビキのおかげだ」


「⋯⋯ほんと⋯⋯?」


「もちろん、だから目を開けても大丈夫だよ」


「⋯⋯」



 ヒビキはゆっくりと目を開き、俺に覆いかぶさったまま身体中をぺたぺたと確かめる。



「⋯⋯良かった⋯⋯」



 一通り確認をして満足したのか、彼女は柔らかな笑みを浮かべてくれた。


 安心してもらえたようで、何より──



「──五体満足で⋯⋯」


「⋯⋯」



⋯⋯ボソッと怖い発言が聞こえたが、なんにせよ彼女に安心してもらえて良かった。



「⋯⋯あー、ヒビキ⋯⋯?」


「⋯⋯?どうしたの?」


「⋯⋯いやその、そろそろ起き上がりたいん、ですけど⋯⋯」



 可愛らしくきょとんと首を傾げるヒビキに、遠回しに今の状況を伝えようとする。


 今の体勢は傍から見ると⋯⋯いや俺の心拍数的にもかなりよろしくない。



「⋯⋯」


「⋯⋯?ヒビキさん⋯⋯?」


「⋯⋯えいっ」


「──うひゃぁ!?ひ、ヒビキ!?なぜ脇腹を⋯⋯っ!?」



⋯⋯何故かお茶目ないたずらをされてしまった。



「──おーい!二人とも生きてるー!?」



 遠くからジェイソンの快活な声が近づいてくる。



「──っ、やば⋯⋯っ」



──不味い⋯⋯!今この状況を見られるのは⋯⋯!



「おーい⋯⋯え⋯⋯?あー⋯⋯えっと⋯⋯何してるの⋯⋯?」


「──い、いやこれには事情がうわジェイソン血だらけじゃないですか!?!?」



⋯⋯どうやら向こうの方が不味い状況らしかった。



「大丈夫大丈夫!ジェイソンは落下死なんてしないから!!」



 ジェイソンは意味不明な理論で無事を宣言するが、全身が血に塗れ、至る部分から骨が突き出したり内臓が溢れ出ていたりするその姿は、とても無事とは言えないものだった。



「あはははは!!!」


「こわ⋯⋯」



 最もそれは、彼女が『不死身能力者』でなければの話だが。


 事実、彼女の肉体はこちらが瞬きをする一瞬の間に傷が『消滅』し、肉体はどんどんと健康体に近づいていく。



「⋯⋯」



⋯⋯ジェイソンの能力、再生の過程が見えないのが怖いんだよな。



「⋯⋯ところでジェイソン、何を引き摺ってるんですか?」



 服に付着した血液までもが綺麗さっぱり消えた辺りで、ずっと彼女が引き摺っていた巨大な何かへと注目を移す。


 怪物のような見た目のそれは血を流し、既に死んでいる様子だった。



「⋯⋯もしかして、さっきの血って返り血だったんですか?」


「うん、落ちたところに何体かいてさ。攻撃されたから」



「返り血と私の血の割合が半々くらいかな!あはははは!!」と神経を疑う補足をしながら、ジェイソンは巨大なそれを片手で俺達の前まで引き摺ると、神妙な顔をして告げた。



「──二人とも聞いて。たぶんここは『魔法少女都市』だ」


「「『魔法少女都市』⋯⋯?」」



 聞き覚えの無い単語だ。


 隣のヒビキとシンクロしたように、二人で首を傾げてしまう。



「まぁ知らないよね⋯⋯雫さん、『私が必要』ってただの説明役じゃん⋯⋯」



 ジェイソンは少し落胆した様子でぼやく。どうやら『彼女しか知らない』といった単語ではないらしい⋯⋯しかし俺達はその言葉を知らないため、やはり先輩の判断は正しかったのだろう。



「⋯⋯ジェイソンは、ここがどこだか知っているんですか?」


「まぁね。詳しくは後で説明するけど、こんな化け物がうじゃうじゃいる場所ってこと」


「っ、それだと橘が⋯⋯!」


「うん、早くナギサちゃんを見つけよう」



──危機感を覚えたその時、遠くから衝撃音が響いた。



「──ッ!?」



 見ると、ジェイソンが引き摺ってきたのと同じような化け物が、遠くの鉄塔に絡みついている。


 爬虫類のような見た目だが、遠目からでもそれが認識できる程に巨大で奇怪。



「⋯⋯いや、化け物だけじゃない⋯⋯!」



 そして、それと戦っている存在が二名。


 こちらは遠くからではよく見えないが、大きさからして人間だろう。



「──あれが『魔法少女』だよ」


「⋯⋯え?」



⋯⋯確かに動きは人間離れしているように見えるが、そもそも『魔法少女』というのが──



「──うわぁ!?なんか怪物が弾けた!?」



 戦っていた二人とはまた別の人間が、一瞬で怪物を仕留めてしまった。


⋯⋯彼女も『魔法少女』なのだろうか。



「っ⋯⋯いや、違う」



 遠くからでも分かる、キラキラとした魔力。



「橘だ⋯⋯!あそこにいる!」



 無事で良かった⋯⋯!


 安堵から、彼女の元へ走り出した瞬間──



「──え?」



 信じられない光景に足が止まってしまった。



「──橘⋯⋯あれ、何してんだ⋯⋯?」

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