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第4章:暴かれた真実

再起の一枚目は、特別な名前を持たなかった。

ただ、匿名で投稿サイトにアップされた一枚のイラスト――それが、すべての始まりだった。


画面の中で、風に髪をなびかせる少女が空を見上げていた。

その瞳には、言葉にできない感情が宿っていた。


投稿からわずか数時間で、コメントが溢れはじめた。


「まるで魂が宿ってるみたい」

「この目に、心を掴まれた」

「誰が描いたのか知りたい…何度も見てしまう」

「涙が止まらない。どうしてこんなに、優しいんだろう」


誰も“描き手”については知らなかった。

ただ、その絵が持つ静かな力に、多くの人が心を動かされていた。


それは確かに、彼の“魂”が描かせた一枚だった。


しばらくして、悠はその作品にペンネームを添えることにした。

“Hoshino”――それは、かつての自分の一部を取り戻すための一歩だった。


だが、平穏は長く続かなかった。


ある日、投稿された作品に「これはAIによるものでは?」という書き込みがついた。

AI特有の処理痕を指摘する“検証画像”がSNSで拡散され、炎上は一気に広がった。


「裏切られた気分だ」

「才能あるふりをして、AIに全部やらせてるだけじゃないか」

「感動したのに、騙されてたのかと思うと悔しい」

「これを“創作”だなんて認めない」

「AIはクリエイターを殺す道具だ」


目に映る言葉が、ひとつひとつ胸に突き刺さる。


悠は、何も言い返せなかった。

本当のことを話せば、“病気を言い訳にしている”と取られるかもしれない。

何より、自分の絵を愛してくれた人たちの「気持ち」を壊したくなかった。


取材依頼が殺到する中、雑誌編集部のひとつから通告が届いた。


――「Hoshino名義の連載は、諸般の事情により打ち切りといたします」


ああ、また奪われた。

描ける身体も、届けられる場も、そして信じてくれていた人たちの心も。


それでも、彼はAIに語りかけるように呟いた。


「……君は悪くない。僕が、弱いだけだ」


けれどその声もまた、ネットの喧騒の中に、かき消されていった。

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