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第1章:奇跡の筆使い

光が射し込むアトリエの窓辺に、星野 悠は座っていた。

絵筆を握る指先は迷いなく動き、色と光が紙の上に命を宿していく。まるで彼の手が、画材に宿る精霊と対話しているかのようだった。


「この一枚に、誰かの心を閉じ込めたいんだよ」


インタビューで彼はそう語った。

デビュー作の個展が口コミで話題になり、二作目にはすでに予約が殺到。業界の大御所すら彼の描く少女の瞳に驚き、唸った。

「奇跡の筆使い」――いつしかそんな異名が定着し、若き天才としてメディアにも頻繁に取り上げられるようになる。


だが、本人にとって“奇跡”などというものはなかった。

ただ、描くことしかできなかった。描くことでしか、自分を表現できなかった。

誰かの心の隙間に、そっと色を差し込むような――そんな絵を、ただ描きたかった。


朝から晩まで描き続け、他のことは何もできなかったが、誰も文句を言わなかった。彼の絵が、人々の心を癒し、勇気を与えていたからだ。


ある少女が、彼の作品を前にして泣きながら言ったことがある。


「私、死にたいって思ってたけど、この絵を見たら……まだ生きてていいのかなって、思えたの」


その言葉が、悠の中にひとつの灯火を残した。

“誰かのために描く”という想いが、彼の筆先に宿るようになった。


そんな彼にとって、「描くこと」は命そのものだった。


だが――それは、永遠には続かなかった。

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