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79.距離が近づく
79.距離が近づく
雑貨屋を出た後、二人は並んで歩きながら駅へ向かっていた。
夕暮れの街並みはどこか穏やかで、心地よい風が頬を撫でる。
「……今日は楽しかったね」
由愛がぽつりと呟く。
「ああ、まあ……たまにはこういうのも悪くないな」
素直にそう思った。
何か特別なことをしたわけじゃない。ただ一緒に雑貨を見て、お揃いのストラップを買っただけ。
それなのに、妙に心に残る時間だった。
「陽翔くん」
「ん?」
「……さっきのお店、また一緒に行こうね」
夕焼けに照らされた由愛の横顔は、どこか優しくて。
その言葉に、陽翔は少しだけ照れながらも、自然と頷いた。
「……ああ」
その瞬間、カバンの中のスマホが微かに揺れるのを感じた。
つけたばかりのストラップが、お互いの存在をそっと確かめるように揺れていた——。




