78.お揃いのストラップ
78.お揃いのストラップ
レジで会計を済ませた後、由愛は袋からストラップを取り出し、陽翔に一つ差し出した。
「はい、こっちが陽翔くんの」
「……ああ」
手渡されたストラップは、黒を基調にしたシンプルなデザインで、小さな青い石がついている。
一方、由愛が持っているのは同じデザインで、赤い石がついたものだった。
「なんか……こういうのって、ちょっと照れるな」
陽翔がぼそっと呟くと、由愛はクスッと笑った。
「ふふ、そう? でも、これで私たち、お揃いだね」
(お揃い……)
その言葉が、じわりと胸に染み込む。
ただのストラップ。それだけのはずなのに、どうしようもなく意識してしまう。
「どこにつける?」
「うーん……やっぱり、スマホかな?」
そう言って、由愛は自分のスマホにストラップをつけ始めた。
陽翔もそれにならい、スマホケースの端にそっと取り付ける。
二人のスマホには、色違いのストラップが揺れていた。
「……なんか、不思議な感じ」
由愛がぽつりと呟く。
「何が?」
「だって、こんな風に誰かとお揃いのものを持つのって、初めてだから」
そう言って、小さく微笑む。
「……俺も、かもな」
陽翔も、自分のスマホを見つめながら呟く。
小さなストラップ。
でも、それは確かに二人だけの特別なものだった。
由愛はストラップを指でなぞりながら、少しだけ目を伏せる。
「……大切にしよ」
その言葉に、陽翔は思わず息をのむ。
胸の奥が、温かくなる。
「……ああ」
短く返した声が、少しだけ震えていることに気づかれなければいいと思った。




