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73.小さな変化
73.小さな変化
午前の授業が終わり、昼休みになると、陽翔はなんとなく一人で席を立った。
(……どこで飯食うかな)
由愛と話したい気持ちはある。
だけど、朝から変に注目を浴びていたし、あまりにも一緒にいすぎると余計な詮索をされそうで気まずい。
そう思っていたところで——。
「陽翔くん」
不意に名前を呼ばれた。
振り向くと、由愛が自然に自分の机の隣に立っていた。
「えっと……」
「一緒に、お昼食べよ?」
それは、あまりにも自然な誘いだった。
「えっ、あ、ああ……」
周りの視線が気になりつつも、拒む理由もない。
由愛と二人で昼食をとるのは、別に初めてではないのに、なぜか今日は妙に意識してしまう。
由愛はそんな陽翔の気持ちを知ってか知らずか、いつもと同じように微笑んだ。
「じゃあ、屋上行こっか」
「お、おう……」
自然と並んで歩きながら、陽翔は思う。
(やっぱり、もう「いつも通り」じゃないんだよな)
でも、それが嫌じゃないのが不思議だった。
小さな変化を受け入れながら、二人は屋上へと向かった。




