6.彼女の本当の姿
6.彼女の本当の姿
昼食を終え、午後の授業が始まる前、由愛はふと小さな声でつぶやいた。
「……こうやって、誰かと一緒にお昼を食べるの、久しぶりかも」
「え?」
「中学の時は、あんまりクラスの子と話すことがなかったから」
「……友達とか、いなかったのか?」
「いたよ。でも、そんなに多くはなかったし……それに、周りが勝手に距離を置いてくることも多かった」
由愛の声はどこか寂しげだった。
学年一の美少女と言われるくらいだから、周囲から特別視されていたのかもしれない。
(……だから、一人でいることが多かったのか)
「……俺は、そんな風に思わないけどな」
「え?」
「橘は普通に話しやすいし、別に壁を作るようなタイプでもないだろ?」
「……ふふっ、藤崎くんって、ほんとにおもしろいね」
由愛は楽しそうに微笑んだ。
だが、その笑顔の奥には、少しだけ切なさが残っているように見えた。
(……もっと、彼女のことを知りたいな)
気づけば、陽翔の心の中で、由愛の存在がどんどん大きくなっていく。
——この気持ちは、まだ「特別」ではないのかもしれない。
だけど、確かに今までとは違う感情が芽生え始めていた。