63.募る焦燥
63.募る焦燥
帰り道、陽翔の足取りは重かった。
いつもの道。いつもの景色。
けれど、胸の奥に渦巻く感情は、まるで知らない場所に迷い込んだように落ち着かない。
(……なんで、由愛は浅倉と帰ったんだ?)
今までは、放課後に一緒に帰るのが当たり前だった。
何か予定があるなら、そう言ってくれたはず。
なのに、今日は何も言われなかった。
もしかして——避けられている?
「……そんなはずないよな」
無理やり自分に言い聞かせる。
けれど、今日一日を振り返れば、明らかに距離ができているのは分かる。
昼休みも、授業の合間も、由愛はまるで意図的に陽翔を避けるように動いていた。
——俺、何かしたか?
思い当たるのは、昨日の帰り道でのこと。
けれど、あの時由愛は怒っていたわけでもないし、むしろ普通だった。
(じゃあ……なんで?)
考えても答えは出ない。
ただ一つ確かなのは、このままじゃダメだということ。
由愛が何を考えているのか、ちゃんと聞かなきゃいけない。
けれど、もし……もし「もう話したくない」なんて言われたら?
想像するだけで、胃のあたりが苦しくなる。
何度も深呼吸して、無理やりその考えを押し殺す。
(とにかく、明日ちゃんと話そう)
そう決意して、陽翔は家へと向かった。
——しかし。
翌日、由愛は学校を休んだ。




