51.揺れる気持ち
51.揺れる気持ち
放課後、陽翔は屋上へと続く階段を一段ずつ踏みしめながら上っていた。
(……俺、このままでいいのか?)
最近、由愛と過ごす時間が確実に増えている。
それ自体は楽しいし、由愛も嫌がっている様子はない。むしろ、自然に隣にいることが当たり前のようになってきた。
それが「特別」なのは間違いない。
『2人だけの秘密だよ』
『名前で呼んで』
どう考えても、からかっているか本気なのか分からない。本気なのだろうと思う。だが自分と由愛では釣り合わない。
由愛は、誰にでも優しい。
(俺のこと、どう思ってるんだろう……)
あの時、由愛は告白しようとしたのかな?
なら、男の俺から告白しなきゃ……可哀想?
由愛は騙すような女の子じゃない。そう、からかっているなんてありえないさ。友達として仲良くしたいか、それとも恋的な……?
お揃いのキーホルダーを握りしめる。……これってOKだよな。
ふと、彼女の笑顔を思い出す。
教室で、廊下で、そして屋上で——何気ない会話の中で見せる柔らかい表情。
(もし……告白したら、どうなるんだろう)
最悪の場合、今の関係が壊れてしまうかもしれない。
告白して、気まずくなって、距離ができて……今みたいに自然に話せなくなる可能性もある。
(でも、ずっとこのままってわけにも……)
答えの出ないまま、屋上のドアを押す。
——そこには、すでに由愛の姿があった。
「……あ」
由愛も、こちらに気づいて小さく声を漏らす。
「陽翔くんも、来たんだ」
「まあな」
本当は、誰もいない場所で考えたかった。
けれど、目の前に由愛がいるだけで、さっきまでの悩みがどこかへ吹き飛んでしまいそうになる。
(……今は、もう少しこのままでいいのかもしれない)
焦る必要はない。
けれど、この気持ちを誤魔化し続けることも、きっとできない。
陽翔は、静かに息を吐いた。




