50.意識してしまう日
50.意識してしまう日
昼休みが終わり、午後の授業が始まった。
(……眠い)
昼食後の授業は、どうしても集中力が落ちる。
陽翔は頬杖をつきながら、ぼんやりと黒板を眺めた。
そんな時、不意に隣から視線を感じる。
(……ん?)
ちらっと横を見ると、由愛がこちらを見ていた。
「……」
「……」
目が合った瞬間、由愛はふっと笑って、視線をノートに戻した。
(な、なんだよ……)
特に意味があるわけでもないのかもしれない。
けど、それだけで心臓が少しだけ跳ねる。
それからというもの、授業中も何度か由愛の仕草が気になってしまう。
髪を耳にかける動作、ペンを持つ指先、ふとした瞬間の横顔——。
(……ダメだ。意識しすぎだろ)
自分でもわかっているのに、気づけばまた目で追ってしまう。
「——藤崎、ここ解いてみろ」
「……え?」
先生の声で現実に引き戻される。
「あ……」
黒板には、まったく見ていなかった数学の問題が書かれていた。
(やべ……)
「……」
クラスの視線が集まる。
なんとか考えようとするが、さっぱりわからない。
その時——。
「……陽翔、ここはこうやって考えればいいよ」
隣から、由愛が小声で呟いた。
見ると、ノートの隅に小さく計算のヒントを書いてくれている。
(……っ!)
「えっと……こう、ですか?」
「おお、そうだ。正解だな」
先生が頷き、陽翔はなんとかピンチを切り抜けた。
席に座りながら、小さく息をつく。
「……助かった」
「ふふ、どういたしまして」
由愛は、どこか得意げに微笑んだ。
(……やばい)
可愛い。
そんなことを思ってしまった自分に、陽翔は焦る。
意識しないようにしているのに、気持ちはどんどん膨らんでいく。
もう、気づきたくなかった気持ちを誤魔化すのも、限界に近づいていた——。
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