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4.意識してしまう瞬間
4.意識してしまう瞬間
翌日、陽翔は登校しながら昨日のことを思い返していた。
(……なんであんなにドキッとしたんだろうな)
別に恋愛経験が豊富なわけでもないし、これまでそこまで異性を意識したこともなかった。
それなのに、由愛のあの微笑みを思い出すと、なぜか胸がざわつく。
(いやいや、深く考えすぎだろ)
自分を落ち着かせようとしながら、陽翔は教室のドアを開けた。
すると、すでに席についていた由愛と目が合った。
「……おはよう、藤崎くん」
「あ、おはよう」
なんでもない朝の挨拶。
なのに、なぜか昨日よりも意識してしまう自分がいる。
由愛は特に気にする様子もなく、いつものように窓の外を眺めていた。
(……やっぱり俺の考えすぎか)
そう思いながら席についたが、ふと気づく。
昨日までは「橘」と呼んでいたのに、今日は「由愛」って心の中で呼んでいることに——。
ここまで読んでいただきありがとうございます。