45.始まりの予感
45.始まりの予感
翌朝、陽翔は少し寝不足だった。
昨日の夜のことを思い出しては、布団の中で無駄にもがいたせいだ。
(……マジで、どうすんだよ)
「由愛」って呼んだこと。
「陽翔」って呼ばれたこと。
今までずっと「橘」だったのに、一度名前を呼んだだけで、こんなにも意識してしまうなんて。
(今日、普通に顔合わせられるのか……?)
そんなことを考えながら、学校へ向かうと——。
「……おはよ、陽翔」
待ち伏せしていたかのように、校門の前にいた由愛が笑顔で手を振ってきた。
「っ……!」
(い、いきなり名前呼び……!)
まだ心の準備ができていなかった陽翔は、思わず足を止めてしまう。
「……お、おはよう」
「ふふ、なんか照れてる?」
「そ、そんなことねぇし」
「そっか。でも、昨日よりぎこちなくなってる気がするけど?」
「……気のせいだ」
陽翔はそっけなく言いながら、さっさと歩き出す。
——けど、その横に並んで歩く由愛は、なんだか楽しそうだった。
「ねえ、これからも名前で呼んでくれる?」
「……え?」
「昨日だけ、じゃなくて」
そう言って、由愛は少しだけ頬を染めながら、こちらを見上げてくる。
「陽翔に呼ばれるの、結構好きかも」
「……っ!」
(反則だろ、それ……!)
心臓が跳ねる。
昨日の夜から、ずっと由愛に振り回されっぱなしだ。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ——嬉しい。
「……わかったよ」
「ほんと?」
「でも、お前も俺のこと下の名前で呼ぶんだからな」
「ふふ、もちろん」
「……ったく」
ため息をつきながらも、陽翔の頬もほんのり赤く染まっていた。
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