38.意識しすぎる距離
38.意識しすぎる距離
翌朝、陽翔は普段よりも早めに家を出た。
キーホルダーをつけた鞄を持ちながら、何度も確認する。
(……変じゃないよな?)
昨日の帰り道、由愛に「ちゃんとつけてね」と言われた手前、つけないわけにはいかなかった。
でも、ペアのキーホルダーを堂々とつけるのは、やっぱり少し気恥ずかしい。
(……まあ、気にしすぎか)
そう自分に言い聞かせながら歩いていると——
「おはよう、藤崎くん」
「うわっ……!?」
「え、なにその反応」
驚いて振り向くと、由愛が楽しそうに笑っていた。
「別に、普通に挨拶しただけなのに」
「いや、急に後ろから声かけるから……」
「ふふっ、ごめんね」
そう言って、由愛はふと陽翔の鞄に視線を向けた。
「……ちゃんとつけてくれたんだ」
「あ、ああ……まあ」
由愛の視線を感じるだけで、なぜか落ち着かない。
「……私も、つけたよ」
そう言って、自分の鞄を軽く持ち上げる由愛。
そこには、陽翔と対になる星のキーホルダーがついていた。
「お揃いだね」
「……そうだな」
なんだ、この妙な気恥ずかしさは。
(お揃いって、そんな簡単に言うな……)
「なんか、嬉しいな」
「え?」
「だって、藤崎くんとお揃いのもの持ってるの、初めてだから」
「……っ!」
その無邪気な言葉に、胸が大きく跳ねる。
(マジでやめてくれ……)
由愛は、ただ素直にそう言っているだけなのかもしれない。
でも、そんなことをさらっと言われたら、こっちは意識するしかない。
「じゃ、そろそろ行こ?」
「あ、ああ……」
なんだか、これまでと同じようでいて、少しだけ違う気がする朝。
キーホルダーひとつで、こんなにも気持ちが揺さぶられるなんて。
(……俺たちって、今どういう関係なんだ?)
明確な答えが出せないまま、陽翔は由愛と並んで歩き出した。




