37.特別なキーホルダー
37.特別なキーホルダー
雑貨屋を出て、二人は並んで歩いていた。
由愛は手の中にある小さな紙袋を見つめ、満足そうに微笑んでいる。
「……そんなに嬉しいのか?」
「うん」
「キーホルダーなんて、そんなに特別なものか?」
「特別だよ?」
由愛はまっすぐ陽翔を見つめながら、はっきりと答えた。
「だって、藤崎くんとお揃いだから」
「……っ」
たったそれだけの言葉なのに、心臓が跳ねた。
(おいおい、そんな真っ直ぐ言うなよ……)
顔が熱くなるのを感じながら、陽翔はそっぽを向く。
「ま、まあ……大事にしろよ」
「うん。藤崎くんも、ちゃんとつけてね?」
「……ああ」
そんなやり取りをしながら、二人は家の近くまで歩き続けた。
***
自宅に戻り、部屋に入った陽翔は、さっそくキーホルダーを取り出してみた。
小さな星の形をしたペアキーホルダー。
由愛が持っているものとぴったり重なるデザインになっている。
(……これ、どういう気持ちで俺に渡したんだろうな)
ただの友達として? それとも——。
「……ダメだ、考えすぎる」
ベッドに寝転がりながら、キーホルダーを指先で転がす。
けれど、どれだけ誤魔化そうとしても、嬉しいと感じてしまう自分がいる。
(……やっぱり、俺は由愛のことが好きなんだよな)
もう、否定する理由なんてどこにもなかった。
陽翔は静かに目を閉じる。
由愛の笑顔を思い浮かべながら、心の中で小さく呟いた。
(……お前は、どう思ってるんだ? 俺なんかじゃ釣り合わないよな……)
キーホルダーをぎゅっと握りしめながら、陽翔はゆっくりと眠りについた。




