35.意識しすぎる距離
35.意識しすぎる距離
「……おはよ」
なんとか平静を装いながら返事をする。
けれど、由愛の顔をまともに見ることができない。
(ダメだ、昨日より意識してる……)
「藤崎くん、寝不足?」
「えっ?」
突然、由愛の顔が近づいた。
驚く間もなく、じっと見つめられる。
「目の下、ちょっとクマできてる」
「え、マジで?」
慌てて目をこするが、当然消えるわけもない。
「ふふっ、ちゃんと寝なきゃダメだよ?」
クスクスと笑う由愛に、陽翔はますます動揺する。
(原因はお前なんだけどな……)
けど、そんなこと言えるはずもない。
「……まあ、夜更かししてたからな」
適当に誤魔化すと、由愛は「ふーん」と納得したように頷いた。
「それなら仕方ないね」
「いや、仕方なくはないだろ」
「でも、ちゃんと学校来たし、偉いよ?」
ニコッと微笑む由愛。
それだけで、昨日の悩みなんて吹き飛びそうになる。
(……やっぱ、好きなんだよな)
それを認めるたびに、心臓が妙にうるさくなる。
どうにかして落ち着こうと深呼吸をするが——
「ねえ、藤崎くん」
「ん?」
「今日、放課後ちょっと付き合ってくれる?」
「え……?」
「行きたいところがあるんだ」
由愛は少しだけ、恥ずかしそうに目をそらした。
(……なんだ、それ)
理由は分からないけど——
この誘いを断る選択肢なんて、最初からなかった。
「……ああ、いいけど」
「ほんと?」
「まあな」
「よかった」
由愛はホッとしたように微笑む。
その表情が可愛くて、また心臓が跳ねる。
(放課後……か)
一体、どこに連れて行かれるのか。
そして、これが何を意味するのか。
陽翔は、これまで以上に落ち着かない一日を過ごすことになりそうだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この小説を読んで、少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです 。
感想のお手紙で「面白い」などのコメントをいただけると最高です!(本人褒められて伸びるタイプ)
お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ




