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あおはる  作者: 米糠
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32.距離の変化

 32.距離の変化



 昼休みが終わり、午後の授業が始まっても、陽翔の胸のざわつきは消えなかった。


(……これからも、一緒にいてくれる?)


 由愛の言葉が、頭の中で何度も反芻される。


「もっと、知りたいって思うから」


 冗談のようでいて、冗談じゃない。

 あの時の由愛の表情を思い出すたび、心臓が変に跳ねる。


(……なんなんだよ、これ)


 ただのクラスメイト。

 そう思っていたのに、気づけば彼女の一挙一動が気になって仕方ない。


 隣の席に座る由愛は、いつも通り静かに授業を受けている。

 それなのに——なぜか、今までよりも距離が近く感じる。


(俺だけ、意識しすぎなんじゃ……)


 そんなことを考えているうちに、授業は終わり、放課後になった。


「藤崎くん」


 教科書を片付けていた陽翔に、由愛が声をかける。


「帰る?」


「え?」


「一緒に」


(……またか)


 今朝、たまたま一緒に登校しただけで噂になったばかりなのに——。


「いいのか? また変な噂立つかもしれないぞ」


「別にいいよ」


 由愛はあっさりと言った。


「それに、藤崎くんと一緒の方が楽しいし」


「……っ」


 陽翔は一瞬、言葉を失った。


(おいおい……そんなこと、さらっと言うなよ)


 意識しないなんて、無理に決まってる。


「……ま、まあ、俺も別に嫌じゃないけどさ」


 そう答えながら、陽翔は気づいた。


 ——由愛といる時間が、当たり前になりつつあることに。


 ***


 帰り道、並んで歩く二人の距離は、朝よりも少しだけ近づいていた。


「ねえ、藤崎くん」


「ん?」


「……これからも、ずっと一緒にいてくれる?」


「……」


 由愛は前を向いたまま、ぽつりと呟くように言った。


(……ずっと?)


 それは、どういう意味なのか。


 友達として? それとも……。


 陽翔は一瞬迷ったが——


「……ああ」


 気づけば、自然と頷いていた。


 由愛は、そんな陽翔の答えに満足したように、ふっと微笑んだ。


 そして——


 彼女の指先が、ほんの少しだけ、陽翔の袖に触れた。


 まるで、そっと確かめるように。


 陽翔の胸が、また静かに高鳴る。


(やっぱり、もう誤魔化せねぇな……)


 この関係は、もう「ただのクラスメイト」じゃない。


 ——二人の距離は、少しずつ、でも確実に変わり始めていた。

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