22.彼女の過去
22.彼女の過去
放課後、陽翔は由愛に連れられ、駅前のショッピングモールに来ていた。
「で、何買うんだ?」
「んー、ちょっと雑貨とか見たいなって思って」
「雑貨って……具体的には?」
「決めてないけど、可愛いのがあったら買うかも」
(完全に俺、付き添い係じゃねぇか……)
心の中でため息をつきつつ、陽翔は由愛の後ろを歩く。
由愛は楽しそうにいろんな店を見て回り、時折「これ、どうかな?」と陽翔に意見を求めてきた。
そんな時間は、なんだか心地よくもあった。
しかし——。
モールの一角で、由愛の足がピタリと止まった。
「……あ」
「ん? どうした?」
陽翔が視線を向けると、少し離れた場所に、一人の女性が立っていた。
長い黒髪に、落ち着いた雰囲気の美しい女性。
年齢は二十歳くらいだろうか。
だが、由愛の表情が明らかに強張っているのを見て、陽翔は違和感を覚えた。
「知り合いか?」
「……うん。でも、会いたくない」
「え?」
そう言うと、由愛はくるりと背を向け、人ごみの中へと歩き出した。
(おいおい、何があったんだよ……)
訳が分からないまま、陽翔も慌てて彼女の後を追う。
しばらく歩いて、人気のない広場まで来たところで、由愛はようやく足を止めた。
「……ごめんなさい。急に逃げるみたいなことして」
「いや、別にいいけど……あの人、誰なんだ?」
由愛は少し俯き、静かに呟いた。
「……姉、だよ」
「姉……?」
「橘 美咲。私の、実の姉」
そう言って由愛は微笑んだが、その笑顔はどこか寂しげだった。
(姉……でも、なんであんなに避けてたんだ?)
——由愛の中には、まだ俺が知らない「何か」がある。




