20.止まらない想い
20.止まらない想い
帰り道、夜風がほんのりと肌を撫でる。
陽翔はポケットに手を突っ込みながら、由愛の住むマンションを見上げた。
さっきまで隣にいた彼女は、今はもう自分の部屋に戻っている。
(……はぁ)
ため息が漏れる。
心臓の鼓動が、まだ少し速い。
なんでこんなに意識しちまうんだろう。
今までの俺なら、誰かを好きになるなんて考えもしなかったのに。
ふと、由愛の笑顔が頭に浮かぶ。
少し天然で、時々鋭くて、いつも振り回されるけど——一緒にいると、なぜか楽しい。
これが「好き」なら、それも悪くないのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、ふいにスマホが震えた。
「……ん?」
画面を見ると、由愛からのメッセージだった。
『ちゃんと家に着いた?』
(……なんだよ、急に)
少し驚きながらも、すぐに返信を打つ。
『今帰ってるとこ』
すると、すぐに返事が来た。
『そっか。今日は楽しかったよ』
(……俺も、って送るべきか?)
いや、なんかそれは恥ずかしい。
少し悩んだ末、シンプルに返した。
『おう』
それでやりとりが終わるかと思ったが——数秒後、またメッセージが届いた。
『また一緒に遊ぼうね』
「……っ」
心臓が跳ねた。
スマホの画面を見つめたまま、陽翔はしばらく動けなかった。
(こいつ……無自覚でこんなこと言うんだから、ほんとずるい)
けれど、そんな彼女の言葉が、たまらなく嬉しい自分がいる。
そのまま夜空を見上げると、星がちらちらと瞬いていた。
「……また、か」
スマホをしまい、夜風に吹かれながら、陽翔は静かに歩き出した。
この気持ちは、もう止められない。
たぶん、いや、きっと——俺は、橘由愛が好きだ。




