表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あおはる  作者: 米糠
17/250

16.「もっと知りたい」の意味

 16.「もっと知りたい」の意味



 屋上での会話が終わり、昼休みが終わる頃には陽翔の胸のざわつきも少し落ち着いていた。


(焦らなくていい——か)


 由愛の言葉は不思議と優しくて、彼女の方がずっと大人びて見えた。

 それなのに「藤崎くんのこと、もっと知りたい」なんて言われてしまって、逆に自分が子供っぽく感じてしまう。


(俺も……橘のこと、もっと知りたい)


 でも、その「知りたい」という気持ちの正体が何なのか、まだ分からない。

 それが友情なのか、それとも恋愛感情なのか——。


 そんなことを考えながら、午後の授業をぼんやりと過ごしていた。


 ◇◆◇


 放課後、陽翔は机の上でぼんやりしていた。


「……藤崎?」


 ふいに、隣から由愛の声が聞こえた。


「おーい、藤崎くん?」


「あ、ああ、悪い。ちょっと考えごとしてた」


「珍しいね、そんな顔するなんて」


「……そうか?」


「うん。何か悩みごと?」


 陽翔は一瞬、由愛を見た。


「……橘ってさ」


「うん?」


「俺のこと、なんで気にかけてくれるんだ?」


 由愛は一瞬、驚いたように目を瞬かせた。


「……それ、逆に聞いてもいい?」


「え?」


「藤崎くんは、私のこと気にしてる?」


「……っ」


 思わず言葉に詰まる。


(それは……気にしてるに決まってる)


 今日一日、ずっと彼女のことを考えていた。

 隣に座っているだけで意識するし、ふとした笑顔に心が跳ねる。


 でも、それが何なのか自分で分かっていないから、素直に「気にしてる」と言えない。


 すると、由愛は小さく笑った。


「……藤崎くんって、ほんと鈍感だよね」


「え、なんで?」


「ふふっ、なんでもない」


 そう言って、彼女はカバンを持ち上げた。


「ねえ、藤崎くん」


「ん?」


「今日は、寄り道しない?」


「え?」


「昨日はカフェだったし……今日は別のところ行こうよ」


「……また二人で?」


「うん」


 陽翔は一瞬迷ったが、すぐに頷いた。


「……いいけど、どこ行くんだ?」


 由愛は少し考えてから、いたずらっぽく微笑んだ。


「藤崎くんの行きたいところに付き合うよ」


「俺の?」


「うん。ほら、私のこと“もっと知りたい”んでしょ?」


「……っ!」


 さっきの自分の気持ちを言い当てられたような気がして、陽翔はドキッとする。


(こいつ、俺よりも俺のこと分かってるんじゃないか……?)


 由愛の笑顔を見ながら、陽翔は改めて思った。


 ——もっと知りたい。


 それは、ただの好奇心じゃない。

 彼女のことを知ることで、自分が何を感じるのか確かめたかった。


「……じゃあ、ちょっと歩こうか」


「うん」


 こうして、二人はまた一緒に帰ることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ