15.「特別」の意味
15.「特別」の意味
「ふーん、ただのクラスメイトねぇ……」
クラスメイトの一人が、からかうように言う。
「でもさ、藤崎くんってそんなに目立つタイプじゃないのに、由愛がわざわざ二人でカフェに行くなんて珍しいよね?」
「それ、ちょっと気になる」
「もしかして、藤崎くんって意外とモテるタイプ?」
突然、自分に話が振られた陽翔は、思わず咳き込んだ。
「モ、モテるわけないだろ!」
「でもさ、由愛がそういう風に話すの、なんか新鮮だよね?」
「え、そう?」
「うん。普段、男子と二人でいるところあんまり見ないし」
由愛は少し考えるように視線を落としたあと、小さく微笑んだ。
「……まあ、藤崎くんとは話しやすいしね」
その言葉に、クラスの女子たちは「おお~」と興味津々な顔をする。
「それってつまり、“特別”ってこと?」
「どうなんだろうね?」
由愛は、冗談めかした口調で言いながら、ちらっと陽翔を見た。
「……っ!」
陽翔は思わず目をそらす。
(特別……? 俺が?)
さっきからの会話でずっと感じていたこと。
由愛の言葉は、どこか曖昧で、だけど決して適当ではない。
(もしかして、俺……)
考えれば考えるほど、自分の中で彼女の存在が大きくなっていく気がした。
◇◆◇
昼休みになり、陽翔は屋上へと向かっていた。
(ちょっと、一人になりたい……)
クラスの雰囲気があまりにも落ち着かなかった。
由愛に対する自分の気持ちが分からなくなりかけていたし、彼女の本心も読めない。
(俺は、どうしたいんだろう……)
そんなことを考えながら、柵にもたれて空を見上げる。
すると——。
「藤崎くん」
「うおっ!?」
突然の声に驚いて振り返ると、そこには由愛がいた。
「な、なんでここに?」
「なんとなく、藤崎くんがここにいる気がして」
「……エスパーかよ」
「ふふっ」
由愛は軽く笑いながら、陽翔の隣に立つ。
「さっきの話、気にしてる?」
「……別に」
「嘘」
「……っ」
由愛はじっと陽翔を見つめる。
「ねえ、藤崎くんはどう思ってるの?」
「どうって……」
「私のこと」
心臓が、一瞬止まった気がした。
——どう思ってるのか。
それを、今まさに考えていたところだった。
昨日までは「クラスメイト」だった。
でも、今はそれ以上の何かになっている気がする。
それが何なのか、まだはっきりとは分からないけれど——。
「……正直、分からない」
陽翔は、正直に答えた。
すると、由愛は少し驚いたように目を瞬かせ、そして微笑んだ。
「そっか」
「……悪い」
「ううん、正直に言ってくれてありがとう」
そう言って、由愛は柵に手を置いた。
「藤崎くんは、優しいね」
「……そうか?」
「うん。ちゃんと向き合おうとしてくれるし」
由愛の言葉が、胸に静かに響く。
「でも、私はね——」
彼女はふっと笑いながら、続けた。
「藤崎くんのこと、もっと知りたいって思ってるよ」
「……っ」
その一言が、まっすぐに陽翔の心を貫いた。
「だから、焦らなくていいよ」
由愛はそう言うと、軽く陽翔の肩を叩いた。
「……ゆっくりでいいからさ」
「……」
言葉が出なかった。
でも、たった一つだけ分かったことがある。
それは——。
(俺も、橘のこと、もっと知りたい)
その気持ちが、確かに生まれ始めていたということだった。
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