11.予想外の一言
11.予想外の一言
カフェを出たあと、陽翔と由愛は並んで駅へと向かっていた。
夕方の街には心地よい風が吹いていて、春の香りが漂っている。
(……なんか、変な感じだな)
いつもなら、放課後は家に直帰するのが普通だった。
だけど今日は、こうして由愛と一緒に歩いている。
しかも、何を話すわけでもなく、ただ並んでいるだけなのに——。
(落ち着かない……)
不思議と、由愛の隣にいるだけで妙に意識してしまう。
彼女の横顔を見るたびに、さっきの言葉が頭をよぎる。
——「君と話してると、妙に落ち着くというか」
(……あれ、どういう意味だったんだ?)
由愛にとって、俺は単なる“話しやすい相手ってだけなのか?
それとも——。
そんなことを考えていると、不意に由愛が口を開いた。
「ねえ、藤崎くん」
「ん?」
「……私のこと、好きになった?」
「——っ!?」
突然の質問に、心臓が跳ねる。
「な、なに言ってんだよ!?」
「ふふっ、冗談」
「お、お前な……!」
由愛は口元に手を当てて、小さく笑う。
「そんなに驚くってことは、少しは意識してくれてるのかなって」
「……っ!」
完全にからかわれてる。
でも、それ以上に——。
(……図星、なのか?)
今日一日を思い返す。
彼女と話して、彼女のことを知って、彼女の笑顔にドキドキして——。
(……いやいや、まだそんなこと考えるのは早いだろ)
自分に言い聞かせるように、陽翔はわざとそっぽを向いた。
「別に、なんとも思ってねえよ」
「ふーん」
「……なんだよ、その『ほんとに?』みたいな顔は」
「別に? ちょっと藤崎くんの反応が可愛かっただけ」
「か、可愛っ……!?」
「ふふっ」
由愛は楽しそうに笑いながら、一歩前へ進んだ。
「じゃあ、また明日ね、藤崎くん」
「……ああ」
そう言い残し、彼女は軽やかに駅の改札へと消えていった。
残された陽翔は、未だに落ち着かない気持ちを抱えたまま、その場に立ち尽くしていた。
(……くそ、あいつのペースに巻き込まれてる)
そう思いつつも、気づけば顔が熱くなっているのを感じていた——。




