表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あおはる  作者: 米糠
109/249

108.少しのすれ違い

 108.少しのすれ違い



 冬休みも終わりが近づき、ふたりはどことなく名残惜しそうに過ごしていた。


 そんなある日。

 陽翔は、地元の友人たちとの新年会に誘われていた。中学時代のグループLINEで自然と話が進み、特に断る理由もなく参加を決めていた。


「今日、地元の奴らと新年会なんだ。夕方からだけど」


「うん、いいね。楽しんできて」


 由愛は微笑んで言ったけれど、どこか引っかかるものが陽翔にはあった。

 ほんの少し、声が沈んでいた気がした。


 その夜——。


 スマホを見ると、由愛からのメッセージが一件だけ。


 《おつかれさま。もう帰った?》


 時間は23時近く。

 すぐに「今帰ってきたよ」と返信すると、由愛からは既読だけがついて返事はなかった。


 (……やっぱ、ちょっと気にしてたのかな)


 そう思って次の日、彼女を近くのカフェに誘った。


 ⸻


「昨日さ、由愛、ちょっと寂しかった?」


 ストレートな問いかけに、由愛は少しだけ口を尖らせた。


「……別に。寂しいとか、そういうんじゃないよ。ただ……」


 そこで言葉を切って、カップを両手で包み込む。


「……少しだけ、不安になる時があるんだよね。陽翔くんが、昔の友達と楽しそうにしてるのを見ると……なんだか、遠くなる気がして」


「遠くなんてならないよ」


 陽翔は即座にそう答えた。


「俺は今、由愛が一番大事だよ。……でも、たまに会う友達とも笑える時間があるのは、ありがたいと思ってる」


 由愛は、ふっと笑った。


「うん、そうだよね。ごめん、私ちょっとだけわがままだったかも」


「いや、嬉しいよ。そういうの、言ってくれるの」


 陽翔は由愛の手に自分の手を重ねる。


「不安になったら、何でも言って。俺もちゃんと聞くし、ちゃんと話すから」


「……うん。私も、そうする」


 ふたりの指がゆっくりと絡む。


 ほんの小さなすれ違いも、言葉で確かめ合うことで、またひとつ絆になっていく——そんな午後だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ