107.ふたりの冬
107.ふたりの冬
終業式が終わり、冬休みが始まった。
クリスマスが近づくにつれ、街の空気もどこか浮き立っていて、陽翔も自然とそわそわしていた。
そして迎えた、12月24日・クリスマスイブ。
陽翔は駅前の広場で由愛と待ち合わせをしていた。
数分の遅れで現れた彼女は、いつもと違う白のコートに赤いマフラーを巻いていて、思わず見とれてしまう。
「……なんか、変じゃない?」
「いや、すごく似合ってる。……可愛いよ」
照れたように笑う由愛の頬は、寒さも手伝ってほんのり赤い。
ふたりはイルミネーションが有名な公園へ向かい、手を繋いで歩いた。
きらめく光のトンネルの下、陽翔はポケットから小さな箱を取り出す。
「はい、メリークリスマス。……プレゼント」
「えっ、いいの? ありがとう……!」
開けると中には、由愛が以前さりげなく話していたアクセサリー店のシルバーのブレスレット。
「まさか覚えてたの……?」
「ちゃんと聞いてたから」
由愛はその場でそれをつけ、大切そうに手首を見つめた。
「……じゃあ、私からも」
小さな紙袋を差し出され、中には手編みのマフラーが入っていた。
驚く陽翔に、由愛は少し照れながら言う。
「……うまくできなかったかもだけど、頑張ったから」
その場で巻いてもらったマフラーは、少しだけごわついていたけど、何よりもあたたかかった。
⸻
年が明け、お正月。
初詣に誘ったのは陽翔だった。
地元の神社で並びながら、由愛はおみくじを真剣に選び、結果に一喜一憂している。
「中吉だったけど、“恋愛運・想いは伝わる”って書いてた」
「……もう伝わってると思うけどな」
「うん。でも、これからもいっぱい伝えていきたいの」
神社の帰り、屋台でりんご飴をひとつ買い、ふたりで交互にかじる。
雪がちらちらと降るなか、由愛は空を見上げて笑った。
「こうして一緒に冬を過ごせるなんて、去年は思わなかったよね」
「たしかに。でも……来年も、再来年も、また一緒に過ごしたいな」
由愛がうれしそうに頷いて、そっと陽翔の腕に寄り添った。
寒さの中にあるふたりのぬくもりが、何よりも心を温めていた。
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冬休みは、まだ続いていく。
次はどこへ行こうか、何を話そうか——そんな“日常の幸せ”が、ゆっくりと積み重なっていく。




