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2限後の休憩時間。
公民の授業を受けた絃は、気分転換に売店へ向かっていた。
売店は1階にあるため、下級生との奪い合いに備えて急いで向かう。
階段を一段飛ばしで下りた後、下駄箱の前を通過。
渡り廊下を通過すれば売店は目の前だ。
生徒の波をかき分けて、財布を握りしめて、
売店に着いたその時、
どこかから、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
俺は辺りを見回す。
声は聞こえるのに声の主は見つからず、群衆から離れてみる。
すると背後から手が伸びてきて、体が渡り廊下の方に引っ張られた。
俺は横転する恐怖を覚え、そいつを放り投げようと腰を掴む。
敵の体を浮かせて地面に叩きつけようとしたその時、
目の前の敵が友人であると気づき、間一髪で胴を捩じった。
しかし、間に合わず2人そろってノックアウトしてしまった。
うめき声を上げながら起き上がり、俺はそいつに手を差し伸べる。
「すまん、灯だとは思わんかったわ。柔道部の性分やと思って許してくれや!」
(…ん?)
俺は灯の違和感の在りかを探す。
今日の灯は明らかに元気がない。
…というか、そういえば、学校休んでたな。
(何かあったんか?)
灯に声を掛けようとした直前。
「今日の放課後、話したいことがあるから、公園に17時に来て。」
灯は一言そう告げただけで、走り去ってしまった。
(俺、今日部活あるんだけど...)