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ブンメイタイカ  作者: トルバドール
プロローグ
6/9

6

「ふぉー!コンビニの中あったかぁ。」


僕たちは最寄りのコンビニに駆け込んでいた。

深夜でも営業しているコンビニ、感謝。


「せっかくだから何か買う?」


おにぎり、パン、揚げたてのチキン。おでんもある。

どれを選ぶか眺めていると、凛はレジ横の肉に向かって走り出す。


「これめっちゃ美味しそう。これください!」


凜が機械で会計をしている間に、店員さんがチキンを温め直している。


「…僕も同じのください!」



イートインスペースで、二人でチキンを頬張る。


「んー!おいし!」


凛はアツアツの肉に大満足のご様子。

僕も肉にがっつきながら、左手でポケットに触れる。

すると、確かな感触が伝わる。


「…灯、どした?」


凛に急に話しかけられ、鼓動が速くなる。

慌てすぎて、チキンをテーブルに落としてしまった。


「あっ、勿体ない!ちょっと灯、何やってんのよ。」


「ごめん、ボーっとしてた。」


「もう、しっかりしてよね。」


誰目線?

バレてなさそうかな?

…たぶん大丈夫っぽい。



「いやー、美味しかったねぇ。」


お腹を叩きながら、凜は足取り軽く弾む。

そんなに食ってないだろ。

ポケットからは不安定な重みを感じる。

僕の足取りは重い。


「じゃあ、ここでバイバイかな?」


僕はおもむろに声を発する。

目の先には鉄道の駅。

空は少し青みがかり、夜明けの予兆が現れている。


「そうだね、助かったよ。」


「…それじゃ」


僕は、素早く縁を切り上げる。

凛のことよりも、別のことで頭がいっぱいだった。

すると、凛は小さく、けれどはっきりと、


「…また会おうね」


そう言った。



まるで一夜の夢の出来事だった。

あまりにも現実感のない、誰にも信じてもらえない、そんな出来事。



ただ、ポケットの中の拳銃だけが、彼女の存在を証明していた。

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