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「ふぉー!コンビニの中あったかぁ。」
僕たちは最寄りのコンビニに駆け込んでいた。
深夜でも営業しているコンビニ、感謝。
「せっかくだから何か買う?」
おにぎり、パン、揚げたてのチキン。おでんもある。
どれを選ぶか眺めていると、凛はレジ横の肉に向かって走り出す。
「これめっちゃ美味しそう。これください!」
凜が機械で会計をしている間に、店員さんがチキンを温め直している。
「…僕も同じのください!」
イートインスペースで、二人でチキンを頬張る。
「んー!おいし!」
凛はアツアツの肉に大満足のご様子。
僕も肉にがっつきながら、左手でポケットに触れる。
すると、確かな感触が伝わる。
「…灯、どした?」
凛に急に話しかけられ、鼓動が速くなる。
慌てすぎて、チキンをテーブルに落としてしまった。
「あっ、勿体ない!ちょっと灯、何やってんのよ。」
「ごめん、ボーっとしてた。」
「もう、しっかりしてよね。」
誰目線?
バレてなさそうかな?
…たぶん大丈夫っぽい。
「いやー、美味しかったねぇ。」
お腹を叩きながら、凜は足取り軽く弾む。
そんなに食ってないだろ。
ポケットからは不安定な重みを感じる。
僕の足取りは重い。
「じゃあ、ここでバイバイかな?」
僕はおもむろに声を発する。
目の先には鉄道の駅。
空は少し青みがかり、夜明けの予兆が現れている。
「そうだね、助かったよ。」
「…それじゃ」
僕は、素早く縁を切り上げる。
凛のことよりも、別のことで頭がいっぱいだった。
すると、凛は小さく、けれどはっきりと、
「…また会おうね」
そう言った。
まるで一夜の夢の出来事だった。
あまりにも現実感のない、誰にも信じてもらえない、そんな出来事。
ただ、ポケットの中の拳銃だけが、彼女の存在を証明していた。