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彼女はカプセルから服を取り出して着ている。
僕は後ろを向いて終わるのを待っている。
「ここが何処か教えてほしいって、どういう事ですか?」
僕は妙な気まずさを紛らわすために話しかけた。
本当はカプセルのことが気になって仕方がないが。
「ええっと、...私、記憶喪失なの。」
彼女はハツラツと重い事実を発した。
「記憶があるのはカプセルが落下しているところから。それ以外は覚えていないわ。」
僕は、にわかには信じられないという疑念と、それなら納得できるという安心感を抱えた。
「本当ですか?自衛隊の極秘任務を隠すために記憶喪失って言ってるんじゃないんですか?」
ぶっきらぼうに彼女に言葉を放つ。
まだ5月、ひやりと冷たい風が、頬をつたう。
「それと、寒くないんですか?」
「敬語じゃなくていいよ。めっちゃ寒い。」
震えた声は、思ったよりも人間味の、現実感のある響きだった。
「私は自衛隊じゃないと思うよ。誰って言われたから適当に言っただけ。そんなに運動神経良くないしね。」
顔を上げると、北斗七星が見えた。
小学校の頃の星空観察を思い出して、雄大な空を眺めた。
「お待たせ、着替えたよ。」
その声を聴いて振り向くと、夏服に身を包んだ彼女がいた。
それを見て思った。
可愛…、ダサくね?