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女性のあまりの美しさに、僕は目を奪われた。
それは、完成された美貌だった。
しばらく動けずにいると、女性は僕に気が付いた。
状況が理解できずに頭の中だけが慌てている。
逃げるべきか、隠れるべきか。
もしくは、話しかけるか。
隠れることを選択した僕は、物音を立てずに塀の後ろに進む。
波の音が一層引き立てられるような、無音だった。
あと2、3歩で辿り着こうかというとき、女性が動いた。
何やら巨大なカプセルの中を漁っているようだ。
何をしているのか気になったが、暗くてよく見えない。
彼女はいったい何者なんだろう。
何をしているんだろう。
目を凝らそうと姿勢を変えたとき、足元の石ころを蹴ってしまった。
カーーーーン!!!!
石が電柱に当たった。
その瞬間、「隠れる」から「逃げる」へと作戦を変更した。
反転して一目散に走ろうと、右足に力を込める。
だが、不思議なことに、足に力が入ることはなかった。
「誰かいるの?」
女性の声は、逃げ出そうとしていた僕の動きを止めた。
僕は恐怖で動けなくなってしまった。
「いるんでしょ?出てきなさい。」
女性の声が響く。
気付かれているのが分かっていても、音を立てることが出来ない。
振り向かなくても、こちらに歩いて来ているのが聴こえる。
怖いと感じながらも、金縛りのような感覚に囚われている。
頭をあれこれ巡らせているうちに、あっという間に
「あなたね、見てたのは。」
逃げ場が無くなってしまった。