イケオジ、幼女になる
「気が付いたか」
目が再び開くことなどないと思っていたから、まず生きていたことに驚いた。
薄暗い空間だった。自分が寝ている場所の少し硬いベッドに清潔そうな白い上掛けが見える。
木製の家らしく古びた木肌の天井に、頭をなでる女性がこちらを覗き込んでいた。
「具合はどうだ?」
何か話そうとしたがとっさに声が出ない。
「無理しなくていい。君は熱を出していて生死の堺をさまよっていたんだ。」
こんな表現を使うなんて久しぶりだなあ。
女は妙に越に入って話す。
発言はあれだけど、奇麗な女だった。栗色の長い髪がゆるやかにウェーブを描いている。
「私はルーシーとよんでくれ。君の名は?」
「話せないとわかったばかりでしょう。」
横から別の声が割って入る。
メガネをかけた女性が同じくこちらをみていった。こちらは良くも悪くも普通という感じだった。
少し童顔なのかもしれない。ぽっちゃりした頬で幼く見えるが落ち着いた感じから少し年齢は上の気もする。
名前についてはこの眼鏡に言う通りだ。しかしそれ以上に、名前はなんだったかと思い悩んでいた。
名前、名前。
自分の名前が思い出せない。
「そうだそうだ。すまない久しぶりにこんな可愛らしい幼女が来たから舞い上がってしまって。」
ルーシーはテヘッと笑って自分で頭を小突く。
ん?
いま、聞き捨てならないことを聞いた。
幼女?
傭兵でも幼児でもなく、幼女?
驚いてるうちに話は進む。
「そういう仕草が嫌われるんだからしっかりしてください。大丈夫? これ飲める?」
メガネの女が顔を出し、何かコップを差し出してくる。
色々気になる。
このメガネ女の頭巾や黒いワンピースが修道女っぽいことや、ルーシーという女が美人なこととか、でもどうでもいい。
コップを避けてベッドから這い出る。
「どうした?」
「まだ寝てないと。」
止める周囲を振り切り、部屋を見渡す。簡素な部屋にはベッドと机、入口に…
あった。
這いつくばって進む
姿見鏡を見つけて鏡をつかんだ。
「おいおい?どうした。幼女はかわいいぞ。体調悪くても皮膚疾患じゃないぞ。」
上ずる変態声を無視して姿見鏡にくいついた。
女の子だった。
そこにいたのは女の子で、他の女が言うようにまだ幼い5-7歳の幼女だった。やせ気味で小柄な女の子だった。
あの歴戦の殺し屋だった、自分もとい俺の渋い姿はどうしたんだ。
絶句してるうちに女共にひきずりもどされ、ベッドに押し込められると、妙に甘いシロップを飲まされて、口の中がベチャベチャしたままもう少し寝なさいと無理やり寝かされた。