プロローグ5 ウザ子改造計画
煙幕が晴れ、そこにいたのは、先ほどと同じ忍術ポーズをとり、忍者装束に身を包んだウザ子だった。
装束の色はピンク。超ミニのスカートほどしか丈がなく、すらりと伸びた足は網タイツに覆われている。胸元は大胆にはだけられ、バインと存在を主張する双丘が顔をのぞかせている。
「どう? バッチリでしょ!」
そういってウザ子は、得意そうに肢体をくねらせて、怪しいポーズをとる。
「うんうん! すごい! これこそまさに理想の忍者……ってんなわけあるかボゲェ!」
「アイッタ! な、なんでよ~~! あたしは見えた通りの忍者になっただけなのに……」
「もっと違う、ちゃんとした忍者も見えただろ! なんでこっちになるんだよもう!」
「え~だって、進くんのイメージでけっこうな割合、こっちだったわよ。ほら、ほら、いいでしょう? ウッフ~~~~ン」
そういいながら、前かがみになって胸元を寄せるウザ子。
お、お、もうちょっとで見えそう……じゃなくて!
「これじゃ、お色気爆乳忍者じゃないか。あとぜったい胸盛ってるだろ」
「こまかいことはいいじゃないの。ほら、ねえ、すごいでしょー?」
ウザ子が胸を動かす度に、ぐにぐにと形を変える。
エロい。とてもエロい。だけど……
「中身がお前だと思うと、なんかイマイチのりきれないなあ」
「がーーん!」
俺だってがーんだよ。がっかりだよ。
確かに俺は忍者と名がつくものなら何でも好きだ。
忍者だけじゃなくてNINJAも好きだ。
だから、忍者が出てくると知れば、亀の突然変異体が活躍するアメコミだろうが、忍者が邪神と戦うアクションゲームだろうが、ビバリーヒルズになんちゃって忍者が出てくる洋画だろうが、漫画の類いだろうが、果てはオトナの娯楽だろうが、何でも手を出してきた。
その中には、エッチなカッコをしたくのいちが敵地に潜入したけど捕まり、(エッチな)拷問を受ける、なんてお約束のものまである。
そういった作品も、意外にもピンキリで、単なるコスプレの域を出ないものから、当時のアイテムらしきものしか使わないよう細やかな配慮をしたものまであり、なかなかどうして侮れない。
そう。みんなけっこう忍者が好きなのだ。
そんな諸々のイメージの中から、よりにもよって、そこもってくる?
なにこれ。公開処刑ですか?
「こっち方面はいらないから! 絶対わざとやってるだろ」
「そんなこといいつつ、ジロジロ見てない? ほら? ほら?」
身体を左右にふりながら、誘惑ポーズをとるウザ子。
むう。確かに。改めて見れば……なかなか……いや、やっぱり……
「ウザッ! だめだウザさが先に立つ」
だめだ。なんかもうホント、だめだった。
「だめなんかーーーーい!」
そのチョップ誰へのツッコミだよ。そういうところだよもう。
コホン。
咳ばらいをひとつ。
「ともかくだな。もうちょっとまともな方の忍者も見えただろ。なんていうか、お前の世界でもっと一般的な、目立たない服装と風貌にしよう。地味めで」
「はいはいわかったわよ。こんなもんでどう?」
わざとらしくため息を
つきながら、再び忍術ポーズをとるウザ子。
「ドロン!」
「まだ胸を盛ったままじゃないか。やりなおし」
ドロン。
「足が長すぎ」
ドロン。
「顔が整いすぎだ。そばかすでもつけとこう」
ドロン。
ドロン。
ドロン。
ドロン。
……。
…………。
……………………。
「よし。まあこんなところだろう」
どことなくぐったりしているウザ子を見ながら、合格を告げた。
「オワッタ。オワッタヨママ」
「じゃあ、次に俺の見た目だが」
「オワッテナカタヨ。イイエアルイミオワタヨ」