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プロローグ4 忍者講座

「え? にん……じゃ? 何それ」


「……は?」


 たっぷり10秒ほど経ってから、俺は呟いた。


「いや、忍者だよ忍者。知ってるだろ」

「当然みたいに言われても。知らないわよ」


 《そのような職業クラスはありません》


「は? ハァァァァァァァァァァァ? 忍者だよ、忍者。影を伝い、影に生きる」

「ええと、ということは、暗殺者?」

「暗殺者でもある。でもそれだけじゃない。忍者は薬師でもあり、科学者でもあり、心理学者でもある。あらゆる専門分野をマスターした、ハイパースペシャリスト、それが忍者なのだ!」

「う~ん。メインクラスが暗殺者で、副職が薬師? 副職をつけていっても、その忍者ってのには足りないかなー?」

「違う。そうじゃない。いいか、忍者ってのはだな!」


 それから俺は、忍者というものの在り方、魅力、歴史について、ダイジェスト版でプレゼンした。ダイジェスト版だから、たったの三時間だ。


「どうだ! 忍者がどういう存在か、よく分かっただろ!」

「ハイ、ヨクワカリマシタ」

「おい、ふざけんな。何溶けてんだよ」

「ハイ、オッシャルトオリデス」


 だめだこいつ。自動返答マシーンに成り下がってる。


「……はぁ。もういい。作れ」

「はい?」

「俺は忍者以外になるつもりはない。作れ、忍者」

「いや、作れっていわれても」

「作れ」

「ハイワカリマシタ」

「よし。俺が忍者してやるから、お前はそれを見て、新クラス『忍者』を完成させていけ。俺をぶっ殺したんだから、それぐらいのアフターケアはして然るべきだろ」

「ハイオッシャルトオリデス。コノタビハタイヘンモウシワケゴザイマセンデシタ」

「それからウザ子お前ついてこい。どうせ暇なんだろ」

「ハイワカリマシタ。ええっ!? なんで?」

「『忍者』を完成させる為だ。お前が傍にいりゃ、その都度カスタマイズできるし便利だろうが」


 《行ってらっしゃい、ウザ子》


「ママ!? ひどい」

「決まりだな。細かいことは現地調査するとして、大まかな地理情報とか、教えてくんないかな」


 《いいでしょう》


 行き先は決まった。こっから俺の、いや忍者の伝説が始まるのだ!


「モノローグってるところ悪いんだけど、なんだってあんな片田舎に行くの? 王都とか帝都で、ド派手に活躍して、忍者を皆に知らしめないの?」

「いい質問だなウザ子。確かに、目立てばその分、認知される。だがそれはNINJAだ。断じて忍者ではない」

「ん? 忍者でしょ? どう違うっていうのよ」

「NINJAと忍者は似て非なるものだ。MANGAと漫画ほどにな」

「まん……え?」

「どうやら、ダイジェスト版ではいまいち伝わりきらなかったようだな。いいか、そもそも忍者っていうものはだな……」


 それからみっちり、今度は特急六時間コースで忍者の魅力について語った。


「どうだ。ちょっとは忍者について分かったか」

「ハイ。タイヘンヨクワカリマシタ」

「よし。というわけでウザ子お前。もうちょい地味になれ」

「ハイ。タイヘンヨクワカ……え? どういうこと? 全然意味わかんないんだけど」

「どういうこともこういうこともあるか。お前みたいな女神顔してたら、悪目立ちするだろうが」


 そうなのだ。ムカつくことに女神の分体だけあって、ウザ子の顔は良く整っている。こんな奴と一緒にいたら、注目が集まって仕方ないだろう。


「さすがあたし! 黙っていても衆目を惹きつけてしまうのね」


 ドヤァ!!


 うっざうっざ。

 変なポーズまで取りやがって。愁いを含んだ瞳であさっての方を見ながらドヤ顔するって器用か。大体お前『愁い』とかわかるのか?


「わかるわよ! でもいいじゃない、目立つって。気分いいわよ」

「まだお前そんなこといってんのか。本当になんにもわかってねえな。いいか。そもそも忍者っていうのはだな……」

「わあーーーーーーー! わああーーーーーーーー! ストップ、ストップ、ストォォッップーーーー!」


 なんだよ。特急六時間コースでも伝わらないんだから、これはもうみっちり三日間コースでいくしかないだろ。


「三日間!? 死ぬ死ぬぜったい死んじゃう~~~!」

「何を意味の分からんことを言ってるんだ。いいか、そもそも忍者っていうのはだな……」

「ホントに! ホントに! どうか! どうか! この通り! あっ、ちょっとあたしってばいいこと思いついちゃった! ねっ? 三日間コース受けなくても忍者について分かると思うから! 絶対だから! ね! ね!」


 なんでそんなに必死になるのか全然分からん。俺だったら、三日も忍者について話せるって聞いたらテンション爆上がりなんだが。

 まあいい。何か案があるというなら聞こうじゃないか。

 ずっとウザ子とだけ話しててもつまらんし。


「あれっ? そういえばマーニーはどこいったのかしら」


 《地球に帰りましたよ》


「えっ、ちょ、いつの間に? ズルい! なんであたしだけ」


 《ダイジェスト版が始まった頃です》


「けっこう最初の方だったぁ~~~~~~~~!」


 ウザ子、orzのポーズ。

 そういえば、説明してる途中でマーニーから何か声を掛けられたような気がする。興が乗ってたから適当に返事したような。

 あんまりよく覚えてないな。

「ヒドッ! この仕打ち……」

 マーニーのせいで死んだんだから、冷静に考えたら当事者なのにいなくなるとか色々とヒドイが、本体がここにいるし、別にいいか。

 そういえばかれこれ半日は過ごしている(主に忍者の魅力を伝えるコースで)が、本体女神はずっと俺の対応をしている。

 めちゃくちゃ忙しいとかいってたけど、大丈夫なんだろうか。


 《バックグラウンドで処理しています》


 パソコンかよ。


「いいのよ。それに、この世界に及ぼす色々な影響の震源地のひとつは、今、あんたなんだから。あんたへの対応こそ優先事項なのよ」

「なんか悪いね。だけど妥協はしない。いったいどうやって忍者について理解できるっていうんだ」

「さあさお立合い。お代はみてのお帰りよ。まずは忍者について、できるだけ詳しくイメージしてみて」


 そりゃお安い御用ってなもんだ。いつだってできる。なんたって俺は忍者オタクだからな。四六時中忍者のことを考えてる。

「ふむふむ。ほむほむ。へえ~、あーなるなる。なるへそぉ。キャッ。進さんのエッチ」


 なんなんだ一体。一人で盛り上がって怪しさ爆発だぞ。


「なっるほどねえ。よーしよーし、しょうがないわよねえ。もう」


 ニヤニヤしながらワケわからんこと言ってくるウザ子。

 そろそろ殴っていいかな。


「イタッ! こら、もう殴ってるでしょ!? この罰当たり! 神に向かって!」


 ウザ子のくせに生意気なんだよ。それでどうなんだ。もう分かったのか忍者。


「ええそりゃあもうバッチリ! なんせほらあたしってば神なわけ、神! 神だから、何考えてるか分かるし、しっかり同調すれば芋づる式に見えちゃうのよイメージが!」


 ふんぞり返ってベラベラ喋りだしたなウザ子。

 ってかそれならもう俺の頭の中好きなだけのぞいて、それで『忍者』つくればいいじゃん。


「そうもいかないわよ。どんな影響が出るか分からないし、新クラスなんて慎重に運用しないと。大体、あんたじゃないと、使いこなせないでしょ、忍者」


 それもそうか。実地で試運転って大事だよな。

 それじゃあ、なれるんだろうな。俺のイメージ通りの姿に。


「ええ。モチのロンよ」

「自信満々だな。じゃあ見せてもらおうか。お前が俺の中で見た、理想の忍者の姿とやらを」

「合点承知。ほら、こうでしょ。へんし~ん。ドロン」


 ウザ子はそういって、人さし指だけピンとのばし、両手を重ねた忍術ポーズをとった。

 ドロンの合図とともに、煙幕の演出付きだ。


 いかにもな忍者演出。お主、なかなかやるな。

 本当いうとそれ精神統一のポーズなんだけどね。


 凝りすぎな気もするがはてさて。

 どんな姿が出てくるか、お手並み拝見としゃれこもうか。

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