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タックルボア狩り

 翌日。


 朝の仕込みを終え、手が空いてきた頃、ロアーに出迎えられて、タックルボア狩りに連れ出してもらった。


 コルンドの北門を抜けると、平原が広がっている。

 さらに北へと進んでいけば大森林へとつながっているが、気軽に向かえる距離ではなく、日帰りするのには適していない。


 大森林に至るまでには、ところどころに雑木林が点在していて、村も点々とあり、村人は木こりなどをして生活を送っているようだ。


 多くの冒険者は、メインとなる東西ルートで稼いだり、大森林まで遠征したりしているそうで、目ぼしいものもないこの辺りは通り過ぎているらしい。


 万年Dランク冒険者ロアーは、そんな村々をまわりながら細々としたものを交換したり、村の近辺に出没するタックルボアを討伐したりしては生計を立てているらしい。


 大した依頼があるとも思えない。

 ランク落ちしたりはしないのだろうか。


「時々、昔の仲間に誘われて護衛任務に駆り出されたり、得意先に仕入れを頼まれたりしていますな。そうでもなければ、そのうちにEランクでしょうな」


 ロアー自身は、冒険者ランクについて、大したこだわりは持っていないようだ。

 ランクに応じて武具の手入れに割引などが適用されるらしく、ランク落ちしない程度に知り合いの依頼を受け、後は村々を巡っての半行商人生活。


「パーティーを組んでの冒険も良いものですが、危険もあるし、何より、人間関係が面倒ですな。私には、気ままな今の生活で十分ですな」


 あっさりと、ロアーは言う。


 今日は、ロアーが巡っている村のひとつで、タックルボアが目撃されたらしく、討伐に向かっている。

 村の付近で雑木林に入り、ほどなくして。


 二頭のタックルボアと遭遇した。

 タックルボアたちは地面に落ちている木の実か何かを食べているようで、こちらには気づいていない。



「いましたな。では、私が仕留めてくるので、ここに隠れていてください」


 ロアーの囁き声に、俺は頷いて応える。

 下手に俺が注意を引いてしまうと、タックルボアが俺の方に突撃してくるかも知れず、逆に仕留めにくくなる。


 打ち合わせ通り、俺は草の陰に隠れて気配を消す。


 俺の方を確認したロアーは、ガサガサと派手に物音を立てながら進み、開けた場所に出た。


 タックルボアは鼻が利き、警戒心も強く、奇襲するのは難しいそうだ。

 ただし、姿を見せればほぼ100%突撃してくるので、戦いやすい場所で迎え撃つのが良い。


 ロアーが出ていった方向は、タックルボアが突撃してきても俺が隠れている茂みを通り過ぎるようになっている。

 これなら安心して見ていられそうだ。


 ロアーに気が付いた二頭のタックルボアは、食事の邪魔をされたからか、気が立った様子で後ろ脚をカツカツと動かして、ブキィと唸り声をあげている。


 なんて沸点の低いやつだ。

 こんなのが村の近くにいたら、確かに危険極まりない。


「活きの良いのが見つかりましたな。炙り焼きがいいか、煮込みがいいか」


 背中の槌を構えながら、調理法の検討を始めたロアー。

 その言葉を理解したとも思えないが、タックルボアたちは一際高く鳴き声をあげると、突撃を開始した。


 やや時間差がある。


 ロアーは慌てた様子もなく、一頭目をかわし、横合いから身体ごとぶつかって、俺の隠れている茂みとは反対側へと弾き飛ばした。

 続く二頭目もかわし、すれ違いざまに振りかぶった槌で強烈な一撃を叩きつける。


「ブゴオオオォォ」


 悲鳴をあげるタックルボア。

 地面に倒れ伏し、苦しそうな息遣いだ。あの様子では骨も折れているだろう。まだ息があるものの、時間の問題だ。


 ロアーの体当たりをくらって弾き飛ばされていた一頭目が、ロアーに向き直る。闘志は充分だ。


 もう一頭がやられたのを見て警戒したのか、なかなか突っ込んではこない。


 その時、俺はもう一頭のタックルボアを見つけた。

 元々二頭のタックルボアがいた場所とは反対側だ。


 さっきまでの二頭と比べてサイズはやや大きめ。

 物音を聞きつけたのか、既に突撃体勢に入っている。

 ロアーはまだ気づいていない。


 ロアーの腕のほどは分からないが、気付いていないところからタックルを受けると、危険かもしれない。


 俺は手ごろな石を静かに拾うと、タックルボア(大)の足元に向けて投げつけた。


「ブギィッ」


 タックルボア(大)は、前足に石つぶてを受け、バランスを崩した。


「ややっ、新手ですかな」


 よし。

 ロアーが気付いた。

 どうやら、俺の石つぶてにも気が付いていない。


 これでロアーが倒してくれれば、何も問題はない。


 見たところ、タックルボアはそれほどの脅威ではない。

 木の後ろに隠れたり、木に登ったりすれば、文字通り手も足も出ないだろう。

 ただ、実力をロアーに見られたくはない。



 タックルボア(大)は、まだバランスを崩している。

 ロアーと向き合っている方は、ロアーの注意が逸れたのを好機と見たか、突撃を始めた。


 位置関係からして、ロアーがかわすと俺の方にくる。


「むっ、これは」


 ちらっと後ろを見てから、ロアーはタックルボアへと駆け出した。



 正面衝突。

 ロアーは左手を突き出してタックルボアの鼻をつかむ。

 そして、振りかぶった槌を脳天に叩き落した。



 体勢を立て直したタックルボア(大)が、ここで突っ込んできたが、

 ロアーは余裕をもってかわす。


 何度か突撃をかわしながら、確実に仕留めた。



 最初に致命傷を与えた一頭にも止めを刺し、戦闘は終了した。

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