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スキンヘッド店主の提案

 焼き鳥、美味いな。

 皮と塩のコンビは無敵だ。無敵すぎ。


「ハフッ。ハフッ。ふんまあーーーい!」


 これにはウザ子も大ニコニコだ。

 あげておとされてまたあがったもんな。当然、当然。

 食べられるかと思ったら俺が拒否って、逆転でオッサンに恵んでもらって。

 熱さと格闘しながら食べ進めるウザ子を見ながら、オッサンも大ニコニコだ。


 幸い、俺が一口しか食べてないのはバレてない。

 そのまま自分の串を食べ終えたウザ子にさりげなく渡して、残りも食べてもらうことにする。


「いい食いっぷりだな! ガハハ! どうだうまいだろ!」

「おいひい! おいひいよぉ!」


 ウザ子が完全に残念な子になっている。神の威厳とかない。


「なあ、お前たち。仕事の当てはあるのか?」


 快活に笑っていたスキンヘッドのオッサン店主は、一転、真面目で心配そうな顔になった。

 俺は無難に答えておく。


「まだこの街に来たばかりなんで。ぐるっと見てまわったら、適当に力仕事とか、働き口を見つけようかと思ってます」

「そっかそっか。じゃ、やっぱ冒険者になるのか?」


 俺は、まだングング焼き鳥串と格闘しているウザ子をチラッと見てから答える。


「いえ。戦いとかはあんまりしたくないので、街の中でどっかの下働きでもしようかなって。コネもないんで、直談判するしかないですけど」

「ふーむ。なるほどなあ。いや、実はよ、俺にも当てがあるんだが、もしよかったら……」

「おじさん! それホント!? おねがい! おねがい! チョーおねがい!」


 会話の途中で、ウザ子が割り込んできた。

 手に持った二本の串がオッサンに刺さりそうな勢いだ。


「うおっ。あっぶね! まあまあ落ち着けって」

「ねぇどんな仕事? 何でもする! お金の為なら何でもするわよ!」


 なんかスゲー必死だな。なんでそんな必死なんだ。

 別にウザ子一人なら、金があってもなくても大丈夫そうだが。


「おいしい焼き鳥、お腹いっぱい食べたいよぉ~~!」


 ひどい理由だった。

 まあいい。話に興味はあるから、話し相手はウザ子に任せておくことにする。


「わかった! わかったから! まずその串! 串、ちょっと貸して! ……ふぃ~、まったく。お嬢ちゃんが軽々しく何でもするなんていうもんじゃないし、串を人に向けるんじゃねえぜ。二重の意味で怖かったわ!」

「てへへ。それで、どんな仕事なの?」

「おう。それがな。宿屋なんだが。お嬢ちゃんは接客、そっちの兄ちゃんの方は、荷運びとか、裏方系の仕事になってくるかな。二人とも、もうしばらくこの辺をぶらつくつもりなんだろ? 俺は昼飯食いにそこに行くからよぉ。昼頃にまたこの屋台の前にきてくれりゃあ、案内するぜ」

「そう? ありがとう! 超ありがとう! あたしは今すぐでも全っ然構わないわよ!」


 そこまで聞いて、俺は口を挟んだ。


「いやいや。それはおじさんの方が構うだろ。昼までは屋台やってるんだからそのぐらいわかれよ。じゃあ、ちょっとその辺ぶらついてきます。ありがとうございます」

「おう! もし別で仕事が決まったりしても、教えにきてくれよな! 俺が安心したいから!」

「かさねがさね、ありがとうございます。ホラ、行くぞ」

「おじさん、ありがとー! じゃーねー!」


 こうして、転生初日の午前中、かなり早い段階で仕事の当てをこの手にして、俺たちは屋台を後にした。


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