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ドワーフ国で陶芸始めます2

 翌朝、パンを求め広場へと向かう。昨日の店主から早朝のパンは焼き立てだと教わったのだ。お勧めの場所も教えられたので、そこへと向かう。

 食パンのように四角では無いが、丸い美味しそうなパンがあった。焼き立ての匂いに誘われてもいるが。

 早々にパンと串焼きの朝食だ。店に持ち帰らず、ベンチで食べていた。串焼きは昨日の屋台でタレを選らんだ。

 ちなみに丸パン小は銅貨五枚、中が大銅貨一枚、大は大銅貨一枚と銅貨五枚だった。小はマックのバンズ、中は大きめのコッペパン、大は中二個分だ。中と串焼き一本で朝食は十分だった。

 これで大銅貨四枚、四百円くらいの感覚だが安いと思った。明日は野菜も追加しようと考えていた。

 店に戻り外から見廻す。どうやって陶器を扱う店だと認識させるか、イメージを考えていく。やはり皿を飾るくらいしか思いつかない。自分のセンスが情けない。

 あと、窓が木製で店内は窓を開けないと暗いのだ。この世界、ガラスはあるが高価なのか使っている店は少ないのだ。価格以上に夜間の治安もあると思うが外窓、日本でいう雨戸を追加すればいいのではと考えてもいた。

 だが、改築するには持ち主の許可が必要だ。宰相さんに確認だ。店番と合わせてお願いする。

 結果、窓の変更程度なら許可が下りた。増築は駄目だと言われたが。まずは寸法の確認だ。糸を縦横に合わせて切り揃える。これで枠の大きさは把握できたので、裏庭に廻り木材の加工を始める。久しぶりにスコップで木工細工、楽しかった。窓枠と外側の扉は漆黒樹なので黒だが、壁は石造りなので白黒のコントラストはいいかもしれない。通りに面した壁には五か所の窓があるので、全てを交換する。

 次は出入口の扉だ。左右開きで一枚の幅が一メートル程度、少し大きいか。そこも枠から交換しておく。

 通りから眺める店は窓と扉だけが新しく、壁が古ぼけて見える。色を塗るか考えていた。

 そんな作業に夢中になっていると昼も過ぎ、夕方近くになっていた。そこへ宰相さんとカレーナが来た。

 「こんにちは。ほう、扉も窓も綺麗になりましたね。これは漆黒樹ですか?高価で貴重な木材ですが、いや、聞くだけ野暮ですね。湿地で入手したのですね。強度もあり、燃えにくいですが、加工が難しいのですが。流石異世界人ですね」

 宰相さんは木材にも詳しいようだ。

 「依頼された従業員ですが、カレーナでどうですか。彼女、十日後には契約も終了し、自由になるのですが、務める場所が決まっておらず、冒険者になる予定なのです。読み書きに計算もできるので店の従業員には最適かと思います」

 「本人が望むなら歓迎なのですが、この国に定住するか決めていないけど、大丈夫ですかね。いきなり居なくなることはしない予定だけど」

 「私は雇ってもらえるなら、どこでも大丈夫です。移住するなら一緒に同行してもいいです。獣人ですので、体力に自信はあります」

 「本人が了承しているなら、俺に文句はないな。でも同行は無理かも、移住先が湿地帯かもしれないし」

 「さすがに無理がありますね。生き残る自身がありません」

 「では、明日からは通いで勤めさせましょう。契約終了後はタツヤ様が住居を用意するか、カレーナが探すかですが、タツヤ様はどうしたいですか」

 「二階に部屋が余っているので住み込みも可能だが、俺と二人だけになるが、問題ないかな」

 「住み込みでお願いします」

 「賃金ですが、住み込みで食事付の場合、月に大銀貨五枚が相場でしょうか、そこはタツヤ様の判断でお願いします」

 大銀貨五枚、日本円で五万程度か。食と住が込みだから小遣いが五万だ。

 「では、大銀貨八枚で。仕事中の服はこちらで用意する。いや、お金を渡すので自分の好きな服を買ってきてほしいな。店にでるので相応な服で頼む」

 とりあえず金貨十枚を渡す。羊皮紙を売った金があるので大丈夫。

 「部屋にはベッドとテーブル、椅子でいいかな。クローゼットも必要か。住んでみて必要な家具があったら購入してくれ。足りなければ追加で渡すから」

 「ありがとうございます。それだけあれば十分だと思います」

 「契約成立ですね。十日後に冒険者ギルドで登録を忘れずに行って下さい。身分証が無いと門の出入りも出来ませんので」

 「了解した。一緒にギルドに行くよ。その時、パーティ登録もしよう。パーティ費用を入金するので、食材等必要経費はそれを使ってくれればいい。足りない時は逐次補充するから。あと店の売り上げがあった場合、国に治める税の手続きを教えてほしい。確認を忘れていた」

 「税については他国の商人へ売る場合は二割、国内の商品へは一割、個人への販売は無税です。銀貨一枚の商品を売る場合、他国が大銅貨二枚、国内は大銅貨一枚を必ず商人から貰って収めて下さい。帳簿の扱いはカレーナに任せて大丈夫かと思います」

 「はい、帳簿についても学んでいるので、任せて下さい」

 この世界、一年が三百五十日、誕生日は通し日だ。一年の始まりが春の季節となっている。

 店の外観はレンガを貼ることにした。レンガと言っても赤茶のレンガではなく、陶芸で作るレンガだ。陶器より鮫肌にして、光りの反射を押えないと眩しいよね。積まれている石より大きくして、継ぎ目が重ならないように貼付けすれば補強にもなるだろう。

 接着剤はガーダの担当。強力で壁の凹凸を吸収できる厚みが可能な物と我儘を言ったが可能だった。蜘蛛の能力が素晴らしい。

 夕食前に陶芸で大量生産を済ませておく。夕食後、暗くなってからガーダと張り付ける予定だ。

 酒場に行って食事をしてから仮眠をとる。起きて待っているのも嫌だし、起きている間、やることが無いのだ。TVもゲームも無い。独りだと寝る事以外見当たらなかった。

 日付が変わる前にガーダに突かれて目覚める。結構な時間、寝ていたようだ。

 低所はガーダに接着剤を塗布してもらい、自分で貼付けする。高所はガーダの頑張りだった。接着剤を塗布したらレンガを渡し貼付け。これの繰り返し。背伸びして届く範囲まで自分で頑張ったよ。

 夜明け前に完成した。人の動きも始まっていて、数人が前を通り、壁に張り付く蜘蛛に驚いていた。走り去る人もいたので、後ほど問題になるかな?と思っていたら、隊員と思わしき人が五人走ってきた。

 「ここに蜘蛛の魔獣が居たと聞いた。どこに行った!お前が討伐したのか?」

 やはり問題になってしまった。

 「いえ、自分の従魔なので討伐していませんよ」

 そう答え冒険者証を見せる。裏面に従魔の種類と数が記載されているのだ。

 「確認した。確かに蜘蛛の従魔登録がされている。だが、このような明け方に何をしていた」

 「昨日からこの店舗を借りたのですが、外観を変えようとレンガを貼っていました。高所は届かないので従魔を使っての作業でした。昼間だと蜘蛛の従魔で騒ぎが起こるかと思い夜にしたのですが、明るくなる前に終わらせる予定が遅れまして、住民に見られてしまいました。お騒がせしてすいません」

 「確かに、昼間に蜘蛛の魔獣が壁に張り付いていたら騒ぎになるな。次は詰所に一言声掛けしてもらえるか。住民への説明は我々でも対応できるからな。六番隊、南三の詰所がここの管轄になっている」

 「ありがとうございます。これからは報告させていただきます」

 隊員さん達は戻っていった。

 出来上がった店を再度見廻す。結構良い塩梅だと自画自賛しておいた。少し青を入れても良かったな。機会があれば貼り替えたいが、ガーダ曰く『剥がせない』と言っていたので、このままだろう。

 店に入り、テーブルに座って店内を見渡していた。ここも石壁なので武骨だ。やはり貼りたくなる。

 ここは淡い青がよいだろう。水竜の鱗を混ぜて薄い青のレンガを陶芸で大量生産だ。即完成なのだが。

 レンガが完成すれば貼付けが開始となる。セット作業だ。低所から貼付けを開始する。所々大きさを揃えながらの作業になるが、問題なく張り付けていく。高さ半分ほど貼り付けたところで扉がノックされた。

 昨日作った扉には小窓を追加してあった。そこを開ければ外が見えるよう追加したのだ。

 それを開けると宰相さんが立っていた。扉を開けて中に招き入れる。

 「おはようございます。外壁に手を加えたようですね。綺麗な白い壁が目立っていますよ。この材料も販売するのですか」

 「おはようございます。これは自分用なので販売予定は無いですよ。今は店内も貼っているところです。カレーナは一緒ではないのですか」

 「洋服屋と家具屋を廻ってから来ます。寝具の確保を優先したようです」

 宰相さんが笑いながら教えてくれる。寝具がないと床板の上で寝るようだからな、優先して当然だ。

 「この外壁の素材ですが、他国の貴族屋敷などに適しているように見えますね。商人達の目にとまれば問い合わせてくると思いますよ。価格を上げて貴族用に販売していただけると、税収が潤うのですがね」

 少し黒い笑みを浮かべる宰相さん。確かに貴族用なら数を知れるし、大丈夫かな。もしくは工場の炉で試作して、可能なら職人さんに作ってもらうのも有かな。

 「これは陶芸ですが、レンガと言って土を焼き固めた物です。素材は先日、鉱山でいただいた岩ですよ。ドワーフ国でも炉があれば作れるかもしれません。一度試作してみますが、可能であったなら製造から販売まで委託できる工房を紹介してもらえますか」

 「製造から販売までを委託したいと。紹介は可能ですね。製造は難しいのですか」

 「素材の割合で色や肌目が変わるので、そこは口外しないよう契約したいですね」

 「では、職人を探しておきます」

 「まだ試作も終わっていないので、試作が完成してからお願いします」

 「そうですか。ところで室内は色付きですが、こちらも試作予定ですか?他の色があれば教えてほしいのですが」

 「これは竜の鱗を粉にして使ったので、他所での製作は無理ですよ。他に色付きの石があれば、そうか、宝石を使えば可能かもしれません。とてつもない高額になりそうですが」

 「そこは貴族様ですから。見栄の為に金貨は惜しまないでしょう。ですが白いレンガの流通が増えてからの販売にしましょう。白レンガの価値が下がっても困りますからね」

 ますます黒い笑みを浮かべたよ、宰相さんは某黄門様に出てくる悪代官役が似合いそうだ。国の代官だしな。

 「とりあえずは白レンガの試作から初めてみるよ。俺は朝食を食べていないのだが、宰相さんも一緒に屋台でも行かない?」

 「私は食べておりますので、遠慮いたします。カレーナも来ると思いますので、ここで留守番していてもよろしいですか」

 「留守番、お願いします」

 昨日の屋台でパンと串焼きを買うのだが、葉物野菜も買っておく。肉ばかりでは健康に悪い、野菜も摂らないとね。

 野菜を持って屋台に行けば、パンと串焼きが並んで商売していた。

 「パンに肉を挟むと一味違った味だよ」

 昨日の俺を見て商機を感じたのだろう。

 そのままパンと串焼きを別々に買う。

 正面のベンチに座り、肉を野菜で巻いてからパンに挟んで食べていた。

 二人の店主がこちらを見ていたので、当然ドヤ顔で食べたよ。悔しそうな二人の顔に笑顔を向けて店に戻ればカレーナも来ていた。

 王城のメイドさんが着ていたより地球的なメイド服を着ていた。

 「家具一式と服を買ってきました。この服でよろしいですか。他国の商人さんが『異世界の萌え服』と教えてくれたので、タツヤ様は異世界の方ですので、喜ぶかと思い購入したのですが」

 手首、肩、裾がフリフリのメイド服だ。黒をベースに白のレース、まさしく萌え系だな。この世界に来た日本人だろ、広めたのは。人間の国にはメイド喫茶もありそうだな。猫耳や兎耳だったら一度は体験したいな。だが、目の前に兎耳のメイド、悪くない。

 「それ、レースは取り外せるよな。接客は取り外してくれ。俺の趣味だと思われると侵害だ。嫌ではなく、異世界の常識が抵抗するのだよ」

 レースを外してと言ったところで、カレーナは悲しそうに見て来たので、言い訳だ。本当は嬉しいのだが。

 「家具は昼過ぎには届く予定です。こちらが残ったお金です」

 「それは持っていていいよ。食料など買うものもあるだろうし、毎回手渡しも面倒だからね」

 「タツヤ様がそう言うだろうと、私が小さいですが、収納袋を用意しました。使用者の魔力を登録しないと使えない品です。二人で使用できるよう調整済です」

 宰相さんが財布タイプの収納袋を出してくれた。収納袋は使用者の魔力に反応するので盗難されても使う事ができない。しかも魔力探知が可能な人なら場所が解る優れものだ。

 「ありがたく使わせてもらうよ。代金は白レンガで後払いってことでいいかな」

 「もちろんでございます。他に思いついた品があれば、お願いします」

 宰相さん、今度は商人の笑顔だ。流石としか言いようがないね。

 宰相さんは城に戻ったので、店内のレンガ貼りを再開する。カレーナは自室と他の部屋を掃除している。

 「昼食を用意したいのですが、食材の保管場所を教えて下さい」

 カレーナに聞かれたが、保管場所など無い。全てが収納の中だ。

 小麦粉と肉、朝買った野菜を渡して、不足分は購入するよう伝える。

 「鍋なども購入してもよろしいでしょうか」

 「いいよ。食器は俺が作る物があるから大丈夫だ」

 カレーナが買い物に出かけたので、まずは食器を作る。白陶器だ。パンの皿にスープ皿等を十人分作る。酒場で見た食器を参考にしているので間違いはないはず。来客があって食事となった場合、食器が不足するのは恥ずかしいからな。

 テーブルに並べてから、レンガの貼付けを開始する。カレーナが戻るまでに終わらないな。だが、作る時間もあるはず。ペースを上げていく。

 食事の完成前に店内の作業が終わった。清掃クリーンで汚れを無くしておく。カレーナは魔法が使えないのだろうか、これが使えると掃除が楽になるのに。

 料理をカレーナが運んでくる。両手に一皿ずつ。何回も往復するのは面倒だろうから、午後はワゴンを作ってみよう。

 テーブルには一人分の料理だけが並んでいた。

 「カレーナ、自分の料理は?」

 「使用人が主人と食事を共にすることは無いです」

 「いやいや、独りで食べるより、二人で食べるほうが美味しいから、一緒にたべようよ。

違うな、一緒に食べる事、この指示を守るように」

 「・・・分かりました。ですが、来客があった場合は別でお願いします。店の主人としての格もありますから」

 「そこは理解できる。今日から一緒だから、自分の食事も用意しな」

 二人で食事を終え、カレーナは片付け、俺はワゴンを作る。

 窓枠を作った時に工房でも作業できる大きさの木材を切り揃えておいたのだ。

 ワゴンは五台、厨房内でのカウンターも兼ねるよう台数を多くした。キャスターは自在タイプ、くるくると廻る構造にした。コーナーも綺麗に曲がれるだろう。

 一台を調味料置き場に使うとカレーナは言っていた。他は随時考えるそうだ。追加で食器棚を希望された。確かに十人分の食器が床置きは許せないな。これも作った。

 途中で家具が運び込まれたようだが、工房で夢中になっていたので、報告を受けるまで気づかなかった。そこで夕食について聞かれたが、この世界は肉がメインで野菜少々、スープとパンが定番だった。肉が塩かタレの選択と豚か牛といった種類の選択だ。

 煮るはスープに肉や野菜を入れ、塩や味噌、醤油で味付けだった。うどんや蕎麦は作るのに時間がかかるので、麺を購入する。

 夕食は野菜スープと焼肉塩味、パンでお願いした。塩は岩塩が余っているので渡すと喜ばれた。貴重らしい。

 カレーナは魔法が使えないそうだ。獣人に適応者は少なく、使えても生活魔法だけと言っていた。だが、エルフの作る魔道具で清掃クリーンウォーター着火ファイヤーは補えるそうだ。明日、清掃クリーンだけは買うことにした。



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