間章③ 独り言
いつも通り深夜の時間帯にパソコンが立ち上がり、真っ先にチャットウインドウが表示される。
『こんばんにゃにゃにゃー』
猫が顔を洗うかのような上機嫌な様子で打たれたその文字は、いつにもまして気持ち悪い。
『今日は一日どうだった! こっちはまぁ色々あったよ! 色々ね!』
相手の返答を待たずに意味深な言葉が表示される。
それは何があったのは聞かれたいためか、それとも相手を不快にさせるためのものか。
どちらにせよ相手にこの文字が見えていなければ意味がない。
『あらら、今日はいないみたいですにゃー。まあさすがにいないよねー』
残念そうに呟きが打たれるが、それは本当に残念だったのか。
『でもでも日付的に昨日の今日で現れることはないかにゃー。もし来てたらそれこそ真剣になるよね!』
当然返答はない。
相手のアイコンはログオフ状態の表示がされている。
『じゃあ今日はこの辺で! ゆっくり寝るんだよー! バイにゃー』
チャットウインドウが消され、パソコン上の電源オフボタンが押される。
ゆっくり色と段階を踏んで落ちていくパソコンは、まるで今日の自分の感情を表しているようだった。




