第四話 UNHAPPY
はぁ、昨日は疲れたなぁ。
精神的な意味で、あの、嘉永 紀久子とかいう先生、ホントに物凄く疲れる。
幸いにも今日は化学がなく、あの人は普段、科学準備室に居るらしいから、あまり顔を合わせなくてすむよ。と、木村が言っていたが昨日は何かあったのだろうか。
ま、とりあえず、嘉永=めんどくさいオバハンとだけ憶えておこう。
そう、思いながら智寿は下駄箱から上履きを取り出すと、小さな紙切れが一枚、落ちた。
なんだこれ?
何回も折り畳まれていたその紙切れを開いていった。
どうやらなにか文字が書いてあるようだった。
UNHAPPY? 不幸ってことか? おいおい、新学期早々イジメかな? 内容はなんだろ。
“あなたはいつか死ぬ”
・・・だろうな。 人は誰だって死が訪れる、当たり前な話だ。 これを書いた奴は馬鹿か? ……お? 続きがある。
“ついでに今日、いくつかは分かんないんだけど不幸が降りかかってくるんだって! 頑張れよ!”
なんなんだこれは、単なる悪戯なら低レベル過ぎる。
“追伸 不幸を避けるすべはないらしい。 マジで頑張れよ! ヒントは生理現象だ”
は?
智寿はこのアホみたいな“手紙?”をゴミ箱に投げ入れて早急に教室へと向かった。
全く、一日の始まりがこれってすでに最悪。
席に着くと突如として智寿を便意が襲った。
ぐぅぁ! き、急に腹がぁ!! く、くそぉっ! 今朝、ちょっと腐ってる感じがするヨーグルトなんて食うんじゃなかった!! そんな事より早くトイレへ行かなきゃ。
幸い、智寿はスムーズにトイレへいくことができた。
よし! これで、ゆっくりとできる。
そして、便器のフタの部分を開けようとしたとき異変が起こった。
ん? あ、あれ? 開かない。
フタがどうやっても開かない。 いくら強く引っ張ろうとも、無理やりてこの原理でこじ開けようとも、便器のフタは何故かビクともしなかった。
しかも、その場所の全てのトイレがその状態だった。
なんでだよ! 開いてくれ! なんなんだよこれ、開いてくれよ!! お願いだからぁ!! …ん?
トイレの傍らに目をやると、そこには瞬間接着剤が落ちていた。
智寿は、ソレをゆっくりと拾った。
これで…、これで、接着したっていうのかぁー!!
ん? なにか書いてある。
“便座が塞がっているだと?! まさに、ベンザブロック!!! (笑)”
うまいこと言ってんじゃ、ねえええぇぇぇぇ!!!
智寿は怒りに任せてその接着剤をゴミ箱へ叩きつけた。
と、そんな事してる場合ではない。 急いで別のトイレへ行かなければーー!! うおぉぉぉぉ!!
智寿はトイレを飛び出し廊下を猛ダッシュして、別のトイレを目指した。
もはや、人々の目など気にしてはおれなかった。
うおぉぉぉぉ!! あそこの角を曲がればトイレだ!
と、突然、すぐそばの扉が開きあの男が現れた。
あなたは…、も、元ヤン校長ぉぉ!!
智寿はトイレに行きたい気持ちを抑え、猛ダッシュしていたその足にブレーキをかけて、最悪の事態である、元ヤン校長との激突を避けることに成功した。
だが、校長は智寿が走っていたことに気づいたらしい様子だった。
「うぉい 安田ぁ」
「はい!」
「廊下はよっぽどのことがねぇ限り。 走んじゃねぇぞ」
「はい!」
「分かればいい。 行ってよし!」
「はい!」
うぅ、あの校長、元ヤンがバレたがらもう隠す気がないな。
口調が完全にソッチじゃん。 その内、焼き入れられそうだ。
あぁ、恐ろし。
智寿は校長が見えなくなるところまでは歩いてたが、見えなくなった途端に走り出した。
うおぉぉぉぉ!! 今度こそあの角を!
最後の曲がり角、曲がったところで何かにぶつかった。
「あぁ、すいません。 急いでたも …あ」
「あいたたたた、もう廊下を走るんじゃありません」
か、かかかかかか、嘉永だとぉぉぉぉぉ!!!! 木村の言っていた、あの嘉永だとぉ?!
「全く、君はなにを考えているの? 最初の授業で名前を書き忘れたのも君だったわよね? (以下 とても、とてもとても、とーっても長いながーい文章になってしまうので割愛させていただきます。 ご理解とご協力をおねがいします。 では失礼) もう! 次から走らないようにね!!」
「は…はぃ…」
オバハン!! 話なげぇよ!! 何度かブツがコンニチハするところだったじゃねぇか!!!
はっ! もしや、UNHAPPYって、この事なのか?
そんな事よりトイレ!
はぁ、セーフ セーフ。
~キーンコーンカーンコーン~
あ、遅刻になっちまった。 クソッ!
本当のUNHAPPYはこの遅刻になってしまうことだったのかもしれない。