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異世界創世記  作者: ねこたつ
4章 幕間
95/164

4-24

 キューブ内の案内が一通り終わり一同は石版部屋でこれからのことを相談することになった。だがその前にまだ紹介すべき存在が一つだけ残っていた。


『ずいぶんにぎやかになったわね』


 石版から発せられた音声に、アンナとオリヴィアが首を傾ける。


「なんや!? 岩が喋った?」

「アンナさん、オリヴィアさん、こちらは御正室のノア様です」


 いやちょっとマーシャ……とニイトは訂正しようとするが間に合わず、殊勝な顔つきになったオリヴィアが遮る。


「石の中にいるのか!?」

「この石版は女神さまの聖櫃なのです」


 すると女性陣が一斉にひざまずいた。


『あら、ずいぶん殊勝な子たちじゃない』

「さすがに神族ともなれば格が違いすぎる。ニイトの正室というのも納得だ。我らでは太刀打ちできない」


 一瞬で上下関係が生まれた。


『今日は実体化の日じゃないけどいいわ。特別に姿を見せてあげる』


 石版が光り輝き、美少女の姿のノアが桃色のブロンドをなびかせて顕現した。


「おお、美しい! さすが女神に相応しいお姿だ」

「ほんまや。ほんまに麗しい。後光が差しとるよ。ただ、ちょっと子供っぽい?」

「こら、アンナっ」


 歯に衣を着せぬアンナにややムッとしたのか、ノアはからだを光に包んでその体積を膨らませた。

 光が収束すると、そこには背が高く胸も大きな二十歳前後の美女の姿があった。


「い、一瞬で老けた!?」

『老けるですって!? もう少し語威力を磨きなさい。あたしは外見を自由に変更できるのよ』

「そんなことができるなんて……。まさしく女神様」

『何だったらあなたと同じ姿になって見せましょうか?』


 再び変身したノアは、アンナにそっくりな外見にチェンジした。


「う、うちがもう一人いるっ!?」


 ドッペルゲンガーのように瓜二つな二人。しかしノアはイタズラを思いついたように頬を引き上げると、身長をやや高くして胸も大きくした。さらにウエストや腰周りを引き締めてスタイルを上方修正する。


「うちが美しくなった!?」

『ほらっ、あなたとあたし、どっちが美人かしら?』

「こ、こんなん、ずるいっ! ずるすぎるぅうう! うちの立場がぁあああ!」


 アンナは頭を抱えてうずくまった。


「アンナが失礼な口を聞くからいけないのだぞ。ほら、早く頭を下げるのだ」


 オリヴィアが横からアンナに手を差し伸べて、ますますかしこまる。


「おいノア、悪ふざけはやめてやれよ。アンナだって悪気はなかったんだ」

『わかってるわよ。未来予測演算によると、こういう風に出会い頭にちょっとイタズラしとくと今後の関係が良くなるって結果に従っただけよ。そういうわけで、そんなにへりくだらなくていいわよ。一応あんたたちもこいつの嫁になったんだから、堅苦しいのは無しにして砕けた口調で話しましょう。変に畏まられると逆に話しにくいのよね』

「し、しかし神族の方とタメ口というのは……」

『いいの。あたしが良いって言ってるんだから、むしろ敬語使ったらダメ。嫁認定を却下しちゃうわよ?』

「そ、それは……、わかりまし、わかったよ。ノア……殿」


 冷や汗を流しながら口調を正すオリヴィアだった。


『それはそうと、あんたちはこれからどうするの? ここで一緒に暮らす? ホームを増築すれば二階三階とスペースを広げられるわよ。なんなら一人ずつ個人部屋を作ったらいいわ』

「それはありがたい。部屋は幾つあっても困らないからな」

『ほいさ。移動は【扉ワープ】スキルを使って直接それぞれの部屋に飛んでね。ついでに子供部屋も作っとく?』

「「「こ、子供部屋っ!? あぅあぅ……」」」


 嫁たちが一斉に顔を赤くした。


「さすがにそれは気が早すぎだろ。まずはアンナとオリヴィアが新しい生活になれるのが先決だ。それにそれぞれの世界でやることもあるし、できれば外とキューブを行ったり来たりできないかな?」

『そうね。ゲートを開きっぱなしにしておくから自由に移動してちょうだい。混乱を避けるために、一応それぞれの出身世界にだけ自由に出入りできるように設定しておくわ。場所は今のままでいいわよね?』


 アンナの工房とオリヴィアの宿にそれぞれゲートを固定することになった。【嫁認定】されている人は好きなときに自分の世界へ移動できる。


「別行動してるときに連絡が取れないと不便だな」

『それなら【連絡】スキルを使えばいいわ。キューブの外にいても集合時間くらいは伝えられるわ』

「そりゃ、便利だ。よし、今後の方針を伝えるぞ。まずはこのキューブの生活や文化を発展させること。そしてもう一つはそれぞれの世界を発展させること。お互いが発展すれば相乗効果でよりよい結果が生まれるだろう。そのためにアンナとオリヴィアにもキューブ魔法を習得してもらう」


 魔法と聞いて、二人の目が輝いた。


「我にも魔法が使えるようになるのか!?」

「威力や精度は素の魔力適性に左右されるけど、基本的に誰でも使えるはずだよ」

「そ、そうか……我が、魔法を……」


 長い間魔力の少なさにコンプレックスを持っていたオリヴィアは、万感の想いが込み上げたように目頭を押えた。


「さっそく二人には基本の魔法を覚えてもらうよ」


 ――アンナとオリヴィアは《魔法の矢》を覚えた。


「さっそく試し撃ちをしてみてくれ」


 空き部屋の一室に移動して、木の的に打ち込む。


「すごい! すごいぞニイト! 我が、我が、魔法を放っているっ!」


 いつになく興奮したオリヴィアが飛び跳ねる。幼少期に戻ったかのようにピョンピョンすると、たわわに実った果実が揺れて目のやり場に困る。いえ、眼福です。

 ニイトの目線にも気付かず、木の的を破壊しつくしても撃ち足りないとばかりに連射している。


「信じられへんな。魔法なんておとぎ話の産物やと思ってたけど、実際にあったんやな。この力があれば、うちもハンターになれるかもしれんな」

「それはやめておけ。魔法が効きにくい敵もいるから、過信は禁物だ。ちなみにこの魔法は回数制限があるから調子にのって使いすぎると――」

「あっ、ニイト、どうしよう。魔法が出なくなった……」

「――こういう風に弾切れになるから注意しろ」


 魔法を覚えれば可能性の幅が大きく広がる。

 あとはそれぞれどんな方向性の魔法を習得するか。

 ニイトは二人の魔法適性を見ながら唸る。


==========

名前   :ニイト マーシャ アンナ オリヴィア 

魔法適性 :C   B+   C   B+


MP   :C   D    A   F

強度   :C   A    D   B

射程範囲 :C   B    D   C

操作性  :C   C    D   B

消費効率 :C   B+   D+  A

発動速度 :C   C    B   B

==========


「オリヴィアはマーシャと似ていてMP以外は申し分ない」


 ただしMPが最低ランクのEよりもさらに悪いFであることが、全てを台無しにしていた。魔法が苦手なエルフとして悩んでいたのも納得である。才能は一番豊かなのに、肝心の魔力がほとんどないときた。これはかわいそうだ。


「逆にアンナは俺に近くて平凡だな。しかしMPとスピードが異常に高い」


 こちらは才能こそ平凡だが、アホみたいに沢山の魔力を保有している。宝の持ち腐れ感が半端ない。少しオリヴィアに分けてあげれば全てが丸く収まるのに。


「とりあえずオリヴィアはキューブ魔法に限っては何をやってもうまくいくだろうから、好きな魔法を選んで取得するといい。アンナはどうしても火力不足になるだろうから、素早い発動を生かして補助的に使うのがいいだろうな」

「うぅ……、またしてもオリヴィアが優遇されとる。絶対、あのおっぱいがいけないんや」


 アンナが指をわきわきさせると、反射的に胸を庇って半身になるオリヴィア。


「まあ、そう言うなよ。才能自体は俺とたいして変わらないんだから。あの二人はエルフの血が入っているから、特別魔法の適性が高いんだよ」

「そうなんか。うちも魔法の才能が伸びひんかな?」

『伸びるわよ』

「ホンマかいな!? ご、御正室様」

『ノアでいいわよ』

「なら、ノアはん。どうやったら才能が伸びはりますの?」

『筋肉と同じで、使えば使うほど成長していくわよ。他にも魔力量の多い場所で瞑想したり、魔力を成長させる食べ物を食べたりとか、いろいろ方法はあるわ』

「おぉ!?」


 これにはニイトも耳を大きく開いた。是非とも魔法の才能を伸ばしてみたい。


「なあノア。次に行く異世界だけど、魔法が成長しやすい世界ってあるか?」

『そうねぇ……、ちょうど良さそうな世界が一件検索できたわ』

「ナイス! それじゃ、次はその世界に行こう。この際だからみんなで一緒に行ってキューブ魔法じゃない普通の魔法も習得しちゃおうぜ」


 ニイトの提案に三人は諸手を挙げて賛成した。



                      4章 幕間 完

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