表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界創世記  作者: ねこたつ
4章 植獣世界と巨乳エルフ
85/164

4-14

 来るべき遠征に向けて、ニイトとマーシャはキューブで魔法の強化を行った。

 といってもキメラ・プラントは高い魔法耐性を持っていることを事前に聞かされていたので、おもに《解毒》などのサポート魔法を充実させることになる。


==========

     マーシャ          ニイト

名前  :解毒 キュアポイズン

ランク :☆☆ 

レベル :1 → 3        1 → 2

残り回数:40/40          25/25

効能  :D            E+

治療範囲:D →D+(一人の全身) E+(拳大の範囲)→D(一人の広範囲)

成功確率:C (50%)       D+(40%)

治療速度:E+(30秒)→D(10秒) E(1分)

==========


 解毒の魔法は既に経験値が貯まっており、ポイントを割り振るだけだった。

 マーシャが一人の全身をたったの10秒で解毒できるようになったのは非常に大きい。次の戦いでマーシャはメディックとしての活躍が約束されたも同然だ。


 ニイトも多少の強化はしたものの、戦場での使い道はなさそうだ。あくまで保険、あるいはマーシャが毒で動けなくなった際の治療用でしかない。

 そんなわけでニイトは別方面の強化を行った。

 それが100万ポイントで取得したこの魔法だ。


==========

名前  :肉体強化

ランク :☆

レベル :1

残り回数:50/50

強化値 :E+(20%アップ)

有効範囲:E+(身体の2箇所まで同時使用可能)

会心率 :E(10%)

有効時間:E(30秒)

自分の肉体の一部または全身を強化し、クリティカル率(会心率)を高める。

==========


 魔法がメイン攻撃でないニイトには、こちらの肉体強化系の補助魔法が本筋になる。

 はじめはEの文字が並ぶステータスを見る限りしょぼそうな印象を受けたが、これが凄まじい威力の魔法だった。


 おそらく当初の効果としては、パンチやキックの一撃を高めるようなものだったのだろう。しかしステが上がることで全身を強化できるようになることは明らか。

 試しに両足を強化して50メートルの短距離走を何度か測定してみた。

 魔法なしでは5秒後半から6秒前半を行ったり来たりだったのもが、魔法を使ったとたんに5秒前半から4秒台を超えることすらあった。


 何も努力をしていない人間が、オリンピックで金メダルを取れるほどの走力を手にしてしまったのだ。

 恐ろしい。才能のある人間が一生を訓練に費やして到達できる領域を、一瞬にして超えてしまった現実に怖気が走った。いっそ罪悪感すら覚えるほどに。

 しかもこれは短距離だけではない。反復横飛びだろうが垂直飛びだろうが、ローキックだろうが正拳付きだろうが、どんな動きでも同じように強化される。

 言うなればあらゆる種目で世界トップレベルになれてしまうほどのブーストをしてくれる魔法だったのだ。たった20%の強化値なんてとんでもない。人外に到達する数値だ。しかもまだまだこの能力は成長する。


 ただし、リスクもあった。

 自力以上の力を出すので、当然身体への負担が大きい。長時間連続使用し続けるとからだのあちこちが痛む。大きすぎる力に自分の身体が耐えられずにダメージを受けてしまうようだ。

 なので使い方の研究に時間がかかった。なるべくからだに負担が少ない強化のしかたで、それでいて効果的な動きやコンビネーションを考えることにした。


 野菜世界に行って野菜魔人たちに稽古の相手をしてもらい、短期間で効率的な戦闘技術を学んだ。

 ひたすらに肉体強化の魔法を使い込み、そしてマーシャに《治癒》の魔法で回復してもらう修行を数日間続けた。

 そのおかげでだいぶコツや使いどころがわかってきたし、魔法のレベルも上がった。


==========

名前  :肉体強化

ランク :☆

レベル :1 → 3

残り回数:50/50

強化値 :E+(20%アップ)

有効範囲:E+ → D(身体の半身)

会心率 :E(10%)

有効時間:E(30秒)→E+(1分)

自分の肉体の一部または全身を強化し、クリティカル率を高める。

==========


 全身の半分ほどを一度に強化できるようになり戦術の幅は大きく広がった。

 さらに持続時間も1分に伸びて、連続仕様ならば50分も超人レベルの身体能力を得られるようになった。

 たった数日間で戦闘力がありえないくらいインフレを起こしている。

 ついでにマーシャの治療魔法も強化されている。


==========

名前  :治療 ヒール

ランク :☆ 

レベル :1 → 3

残り回数:40/40

効能  :D  

治療範囲:D → D+(一人の全身)

完治確率:C (50%)

治療速度:E+(30秒)→ D(10秒)

==========


 こちらも回復量よりも発動速度や効果範囲の拡大を優先させた。

 過激な動きを繰り返して全身が消耗するニイトを効率的に癒すための調整になった。

 一応基本の魔法である魔法の矢の強化状況も見ておく。


==========

     マーシャ     ニイト

名前  :魔法の矢

ランク :☆

レベル :2 → 5    1 → 3

残り回数:160→320  50/50

威力  :D → D+   E+ → D+

効果範囲:E(単体)    E

命中率 :E+       E

攻撃速度:C → C+   C

==========


 まとめるとこんな感じ。


 ニイト  《魔法の矢》Lv3《肉体強化》Lv3《解毒》Lv2

 マーシャ 《魔法の矢》Lv5《解毒》Lv3《治療》Lv3《火の槍》Lv2


 これでやれるだけのことはやった。あとは当日を待つばかりだ。


     ◇


 迎えた討伐遠征の日。

 二十人を超える討伐隊が虫製の武器を手に山道を進む。

 戦闘集団には集落の事実上トップであるエルフの長老が自ら進軍し、軍団の士気は非常に高い。

 ニイトたちもその後ろから続いた。


「者共、気を引き締めよ! 敵はこのすぐ先じゃ!」


 薄暗い森の中を慎重に進むと、ついに陽光が差し込む開けた場所に出た。

 不自然なほど静かだった。まるでこの空間には誰も入らないことが暗黙の了解で決められているように。

 そしてその広場の中央には大きな黒い大樹が聳えていた。地面の上にむき出しになった、幾重にも入り組んだ太い根。その上部には深いしわだらけの幹があり、無数に空いた穴が人の顔を思わせる不気味さをかもし出していた。

 そして穴の奥からは「ォオォオオォオオオ」と、ゾンビの呻き声のような耳障りな音が断続的に聞こえている。幹の中は魔界にでも通じているのではと思わせる異様さだ。


「でかい……」


 先頭の集団が息を飲む。過去にキメラ狩りの経験がある彼らも、これほど大きな規模のものは初めて見た。


「キメラ・プラントは捕食した生物の強みを自身の身体に取り入れて、より生命力の強い生物に自立進化する魔物。時を与えるほどにその力は増してゆく。なんとしてもここで叩かねばならん」

「生きるためにこのような醜悪な姿になるくらいなら、綺麗に一生を終えたいものだ」


 オリヴィアがそう呟くと、周囲の人が一斉に賛同した。

 それぞれの獲物を握り締めて、息を殺す。

 ニイトも新しく鍛造してもらったばかりの長剣を抜き放つ。


 ――『擦火鋸刃』

 ――巨大ノコギリクワガタの牙を加工した長剣。刃に細かい鋸歯が掘り込まれていて、斬った対象に摩擦熱による追加ダメージを与える。


 忙しいアンナに無理を言って打って貰った特注品だ。斬るというよりノコギリのように削る剣で、植物には抜群の効果を発揮する。

 全員がキメラを取り囲むように配置し終えたのを確認して、ついに長老が開戦を告げる。


「者共、かかれぇええええええええええ!」

「「「おぉおおおおおオオオオオオオオオオオオ!」」」


 ついに戦いの火蓋が切られる。人類対キメラ植物の一騎打ちが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ