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異世界創世記  作者: ねこたつ
4章 植獣世界と巨乳エルフ
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4-1


「ついに貯まった!」


 ニイトはノアの電光掲示板に表示されたポイント残量を見て満足そうに頷いた。


「おめでとうございます」


 隣では共に働いてくれたマーシャが満面の笑みを向けてくる。

 およそ1500万ポイント。巨蟲世界で狩りをしまくって素材を売り続けた成果だ。


「ノア、拡張するぞ」

『珍しく強気じゃない。1平方キロメートルに広げると初回で1000万、毎月の維持費は100万よ。限界まで下げても10万はかかるわ』

「だって、はやく生命の木ってのを見てみたいじゃないか。もちろん維持費は可能な限り下げてもらうよ」

『強気なんだか弱き何だかわからないわね。でもま、いいわ。領域が広くなることはあたしの望むところだしね。それで間取りはどうする?』

「それなんだけど、こんな感じはどうだろう?」


 ニイトはかねてから考えていた構想を伝える。


『へー、二層構造にするのね。今の生活空間は高さを変えずに床面積だけ広げて、その地下に巨大な空間をつくると』

「うん。場合によっては地下に何層も重ねて床面積を増やすこともできるだろ」

『悪くないんじゃないかしら』


 ノアはホログラムのような光を照射して、ニイトのアイデアを空気中に映し出す。


「そうそう、こんな感じ!」


 底辺には一辺が1000メートル、高さ900メートルの大きな空間。その上部に高さ100メートルの同じ床面積の生活空間が宙に浮いている状態だ。

 もしも実現できればニイトは天空の住人になれるわけだ。なんともファンタジックで心が躍る。破壊不能な座標固定ブロックを使えば可能なはずだ。


『900メートルもあれば雨雲は自然発生するようになるわ。その分の維持費も削れそうね。ただしそれには植物の呼吸が必要になるけど』

「なら、植林したほうがいいな」

『そうね。できれば成長の早い樹がいいわね。維持費節約の関係で地下空間はほとんどノアシステムのサポートができないから、全て自力でやるしかないわ。普通の木を植林してもいいけど何十年もかかるわよ?』

「そりゃ、確かに大変だ。なら、次に行く世界は決まりだな」


 ――つまり、成長が早い植物が生えている世界。


「ちょうどドニャーフからいろいろ要望が出ていたんだ。服を染める素材が欲しいとか、もっと多種類の調味料が欲しいとか。植物が豊富な世界ならきっと目当てのモノもあるだろう」


 人類が最もお世話になっている素材はおそらく植物。多種多様な素材を様々な用途に用いてきた。


『なら決まりね。拡張するわ!』


 今までに一番長い揺れを感じた。一分近く揺れていたと思う。


『できたわ! さっそく地下空間を全て連結するわね。一つ一つのエリアを個別に管理するより大部屋にしたほうが楽に管理できるわ』


 およそ1万エリアを一つずつ連結していく作業は手動で行うと中々に骨が折れる。ノアに頼めば一瞬で終わるが、手動で行ったほうが経験値が多く入るので頑張る。マーシャと二人でひたすら半透明のホログラムにタッチし続けた。がそのおかげで【エリア連結】スキルのレベルが上がった。


「……はぁはぁ、できたな。さっそく見に行こう。……ところで、どうやって下層に降りたらいいんだ?」

『……考えてなかったのね。下の層に行くにはワープするしかないから、合わせて【扉ワープ】スキルを取得するわよ』


 ――【エリア扉ワープ】スキルを取得しました。消費ポイント……100万ポイント。


「よかった。助かったよノア」

『まったく、ワープスキルがなかったらどうするつもりだったのよ』

「細かいことはいいのさ」


 ニイトは扉に触れて行き先を下層に設定する。そしていざ行かんとしたところ、異変を感じて寄ってきた少女たちに呼び止められた。


「ニイトさま、どこへ向かうのですか? 先程の揺れと関係があるのでしょうか?」

「新しく作った領域にタネを植えに行くんだよ。そうだな、ちょうどいい機会だから、みんなで行くか?」


 すぐさま少女たちは仲間に知らせに言った。

 数分で全員が集合する。


「ニイト殿。新たな領域の拡張、おめでとうなのじゃ。一族の引率はわらわが引き受けますので、どうぞご心配なく。よいな、みなの者」

「「「にゃー!」」」


 ロリカ族長が一声かけると少女たちは列をなした。まるでピクニックに出かける児童を引率する教師のようだ。


「よし、それじゃ行くぞ!」


 綺麗に隊列を組みながら、一向は地下空間へと向かった。


 ワープ扉を抜けた先には荒涼とした荒地が広がっていた。

 草一本も生えていない荒れ果てた地。赤茶色の地面がむき出しになっていて、遠くには小高い丘や急角度で盛り上がった山も見える。

 どこかドニャーフの故郷である滅亡した世界と似通っているが、澄んだ青空のおかげで陰鬱な雰囲気とは程遠い。


「「「広いーっ!」」」


 少女たちが口を揃える。

 地面以外何もない空間だが、それゆえに広い敷地面積だけが強調される。なにせ1平方キロメートルと言えば、東京ディズニー○ンドと東京ディズ○ーシーを合わせた面積がすっぽり収まる広さだ。それだけの広さの空間が全てニイトのものになった。いや、ニイトとドニャーフを合わせた僅か21人の広すぎる庭である。


「「「にゃぉおおおおおおおおおん!」」」

「これこれ! 走るでないっ!」


 ロリカの制止を振りほどき、一斉に走り出す少女たち。猫の本能なのか、広い土地を前に走り出さずには居られないようだ。

 横を見るとマーシャもウズウズと太ももを揺らしていた。


「マーシャも走ってきなよ」

「いいんですか!?」

「自分の足で歩いたほうが面積を体感しやすいだろ。この場所はみんなの新しい庭なんだから」

「ありがとうございますっ!」


 弾むような足取りでマーシャは駆け出した。


「うぅぅ、わらわも行くのじゃー!」


 ロリカ族長も誘惑に耐えかねてみなの後を追う。

 その様子をニイトは後ろから眺めていた。


「しかし広いな。直進すれば1000メートルしかないことは理解しているが、知識と実際に見た体感では全然違うな」

『そうね。でもこのくらいの広さなんてまだまだ序の口よ。これからどんどん領域を拡張してもらうんだからねっ!』

 ノアも満足げに声を躍らせていた。


「この広い土地を何に使おう」

 町を建設したっていい。巨大農園にしたっていい。それこそやろうと思えば巨大テーマパークを再現することだって可能だ。可能性は無限にある。


「真っ白なキャンパスを目の前に可能性を想像するときが、もっとも人が幸せな瞬間かもしれない」

『あんたがそういうセリフを言うと似合わないわね』

「うっせー!」


 しかし今回は既にやることが決まっている。

 生命の樹を植えるのだ。


「どこに植えようか。発芽には水が必要だったはずだから、低地のほうがいいかな?」

『そうね。水場の近くの方がいいでしょうね。中心付近がやや窪地になっているから、その辺りがいいんじゃないかしら?』


 ノアのアドバイスをもとに、ニイトは中央に植えることにした。

 泥水を大量に【購入】して周囲にばら撒くと、地面を流れて自然と水溜りができる。そのちかくに生命の樹の種を水に浸かるようにして植えた。

 しばらくこの状態で経過観察をしてみる。


 1日目。

 種が割れて、中からモモのような割れ目入った白い綿のようなモノが出てきた。触ると弾力があってやわらかい。水辺を探すように根を伸ばした。


 2日目

 芽が出た。虫の翅のように透明で透き通る葉っぱが複数枚生えてくる。陽光を透過して水面に影を落とす姿は神秘的で、一緒に見に来たドニャーフ族も生命の誕生に心を奪われているようだった。


 3日目。

 放射状に伸びた葉っぱが大きく育つ。しかもそれぞれの葉っぱは異なる色になった。赤、青、黄色、緑、黒、灰色、紫、オレンジと、一つとして同じ色の葉はない。光の当たる角度だろうか。あるいはそれぞれの葉が特定の配色だけを反射しているのかはわからないが、見たことのない光景だった。


 4日目。

 陽光を浴びて可愛らしく揺れていた葉が一斉に枯れた。

 何か間違いを犯してしまったのかとニイトは焦ったが、白いモモのような割れ目は大きく育っていたので様子を見ることにした。


 5日目。

 ぴったりと閉じられていたお尻のような白い割れ目が、くぱぁ、と左右に広がった。この時点でニイトは嫌な予感がした。モモなのか綿なのかお尻なのかわからなかったが、そういえば女性器の形に似ていることに気付いたのだ。


 6日目。

 予感は的中し、くぱぁした割れ目の中心から、キノコのように頭部が丸まった茎がにょきにょきと生えてきた。綺麗な言い方をすればご立派な立ち姿、明け透けに言えばち○この形をした幹は、ぐっと力を蓄えるように全身を強張らせて、その頭部の先端から勢いよく、どぴゅーっ! と間欠泉のごとく飛沫を飛ばした。


「ぎゃぁあああああ!」


 勢いよく射出された為に回避しきれず、ニイトと猫娘たちはその液体の一部をからだに浴びてしまう。このときばかりはドニャーフ族を一緒に連れて来たことを激しく後悔したニイトだ。

 顔をしかめながら臭いを嗅ぐが、意外なことに無味無臭。どうやらただの水みたいだった。そして液体には小さな粒が混じっていた。指に乗せて観察すると細い溝が掘られている。

 植物の種のようだ。


 どうやらこの生命の樹は種を精製しては飛沫と共に飛ばす習性を持っているようだった。そして一度噴射した幹はみるみる萎れて割れ目の中に引き込まれていった。

 神秘と卑猥は紙一重である。


 翌日、元気なく萎れた生命の樹は一日冬眠でもしているように変化しなかった。が、そのさらに翌日になると再び白い割れ目ははりを取り戻して元気になった。

 以下、七日周期で同じことが何度も繰り返される。そして日を追うごとに大地には緑が芽吹いていくのだった。


今日から4章です。

ブクマ、ポイント評価、感想、宣伝などありがとうございました。

評価していただけると作者のモチベーションがあがります。


それとプロローグに0を割り込み挿入したのですが、未来のネタバレ情報が含まれるので残そうか削除しようか迷っております。意見をくだされば幸いです。

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