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異世界創世記  作者: ねこたつ
3章 野菜の楽園
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3-5


 野菜魔人は東から来るという情報をもとに、ニイトは村の東側を調べる。しかし夜間ということもあり、月明かりだけを頼りに捜索するのは限界がある。

 踏み荒らされた下草がないか調べたが見つからない。それどころか自分たちの足跡のせいで犯人の消息が掴みにくくなってしまう。

「マーシャ、耳で追えないか?」

「さすがにこれだけ距離が離れていると難しいです」

 打つ手なしか。いや、まだある。

「一度戻ろう」

 ――【帰還】


 キューブに戻ると、別れた石版の間に映る次元の門を凝視する。

「ノア、状況はわかるだろ? 人攫いの捜索はできるか?」

『難しいところだけど、やってみるわね』

 ハイスピードで景色が移り変わる。これなら自分たちの足跡を残さないので、犯人の痕跡だけを見取ることができる。

『それにしても、また厄介事に首を突っ込むのね。大変な被害が出ているわけでもないし、放っておけばいいんじゃない?』

「そう言うわけにもいかないだろう。誘拐は誘拐なんだし。それに遠くから見えないだけで、裏では大きな問題が進行していることだってあるだろ? 一応調べておくほうがいいよ」

 せっかく平和で野菜と果物が豊富な世界なんだ。これを破壊するようなことがあれば阻止しなければならない。

 それに、野菜魔人を倒したときに幽霊のようなものが離れたのも気になる。そもそも野菜魔人って何なのか。

 あーくんの情報によればこの世界の野菜は普通のものだったが、既に沢山食べている自分やドニャーフ族に何らかの悪影響があってはならない。懸念は早いうちに摘み取るべきだ。

「そうだ。それともう一つ聞きたいことがあるんだ。野菜魔人にはマーシャの魔法が効かなかったんだが、そんなことってあるのか?」

『高い魔法防御力を持っていれば、別におかしなことじゃないわ。《魔法の矢》は純粋な魔法エネルギーを飛ばす攻撃だから、それ以上に強い魔力で相殺されたら無力化されるのよ』

「じゃあ、ヤツらはかなり強い魔法抵抗力を持っているってことか。マズイな、どうすればいい?」

 マーシャが沈痛な表情で唇を噛む。

「申し訳ありませんでした。この不始末の責任を取るために、どのような罰をも甘んじて受けます」

「いや大丈夫だから、そんなに落ち込まないで! てか、どうして脱ぎだすの!?」

「謝罪をするときは服を脱ぐのが獣人の習わしですので」

 なんだそのエロい文化は。獣人ってどんな価値観で生きてるんだよ。

「待て待て、とりあえず落ち着こう。はい、深呼吸」

 マーシャを落ち着かせてなだめる。このまま全裸になられてはもう子供の捜索どころではなくなってしまう。

 まったく、マーシャを落ち込ませるなんて許せん! と、ニイトは謎の野菜魔人に怒りを募らせる。

 話の流れを変えるためにニイトは言う。

「野菜魔人に対して対抗策はないのか?」

『物理的にもダメージを与える魔法を覚えたらどうかしら? たとえば元素魔法なんてお勧めよ。火や水の攻撃なら通用するんじゃないかしら』

「それだ!」

 脊髄反射で魔法を購入する。マーシャの落ち込む顔などこれ以上させてなるものか。

 ――火球 ランク2 購入額……400万ポイント。


==========

名前  :火球

ランク :☆☆

レベル :1

残り回数:40/40

威力  :D+

攻撃範囲:D+

命中率 :D

攻撃速度:D


特殊:命中すると周囲に燃え広がり、消火するまでダメージを与え続ける。

==========


「これならいけるだろう。敵は野菜だ。火には弱いはず」

 残りポイントの大部分を消費したがマーシャの笑顔には変えられない。

「今度こそ、必ずお役に立ってみせます!」

「うん、頼むぞ。俺は魔法の適性が低いからマーシャだけが頼りだ」

 眉に力をたくわえて息巻くマーシャ。立ち直りの早さも魅力である。

『見つけたわ。まだ新しい踏み跡よ』

「でかしたノア! そのまま追跡してくれ」

 野菜魔人共め、首を洗って待っていろよっ。


     ◇


 誘拐犯の痕跡を辿って行き着いたのは洞窟のような横穴だった。

 あまり広くない入り口を突き抜けると、左右に見張りの野菜魔人が控えていた。しかしキューブの中から石版に映る映像を見ているニイトたちが気付かれることはなく、そのまま奥へと潜入できた。

 しばらくすると松明の明かりに照らされた広い空間に突き当たった。凶悪な表情を貼り付けた何体もの野菜魔人たちが広場を占拠している。広場の隅には何人かの子供たちが手足を縛られて捕えられていた。そして広場の中央では拘束台があり、一人の少女が縛り付けられて野菜魔人と対面している。

 これから拷問でも行われそうな、たいへんに危険な状況だとニイトは思った。

「お前だな! ナスを食べずに捨てたふとどき者はっ! 捨てられた同胞が貴様に怨嗟の叫びを上げているぞ!」

 細ナスの姿をした魔人が唾を飛ばしながら責め立てる。

「だって、臭いんだもん! それに、色がイヤっ」

 少女が悪びれることなく言い放つと、ナス魔人はかんかんに怒る。

 こんな状況であれば少女はもっと怯えて泣き出しても良さそうなものだが、不思議なことに堂々としている。その理由はすぐに判明する。

「そういえばお前っ! 前にもここに連れて来られた女じゃないか! どういうことだ! ちゃんと教育してやったのに、また野菜を捨てるようになりやがって!」

 前にも来たということは、ピーターが言っていた一度誘拐されて戻ってきた村人なのだろう。そしてまた新たに捕まったと。

「そう言えばそんな気がするような~。記憶が曖昧だわ。というかあんたたち、前に私におかしなことをしたでしょ! しばらく食べたくもない野菜を食べていた記憶があるわ」

「ふん、ならば教育は一時的には効果があったということか。しかし時間が経つと元の状態に戻ってしまうと……。これはもう、『聖戦』を発動するしかなさそうだ」

 物騒な単語がさらりと漏れる。

「まあいい、今日はお前に再教育を施してやる」

 複数の野菜魔人が少女の背後から腕を伸ばして顔を固定する。

「やめてよ! 何をする気!?」

 ナス魔人は下半身を前面に曲げて、先端を少女の口に向ける。そして腰に手を当てながら勢いをつけて突き出した。

「んん――ッ!?」

 少女の口に、ナスの先端がねじ込まれる。

「お前に捨てられたナスの味を、しっかりと思い知らせてやるぜ、ぐへへ! オラッ、オラッ、オラッ!」

 リズミカルに腰を前後に揺らして、ナス魔人は少女の口内を蹂躙している。

「どうだ! 捨てられたかわいそうなナスたちの気持ちがわかったか!?」

 少女は涙目になりながらもキッ、っと睨み返す。

「くっ、反省の色なし。ならばお前の口に、たっぷりと野菜汁を注ぎ込んでやるぜ! しっかりと味わえよ、フンッ、フンッ、フンッ!」

 どんどんピストン運動が早くなっていくナス魔人。

 今までのやり取りから、おそらく野菜の好き嫌いをする悪い子供に教育的指導をしているのだろうことはわかる。

 しかし少女を押さえつけて、黒光りする棒状のいちもつを無理やり咥えさせて腰を振る姿がどうにもアウトにしか見えなかったので、ニイトはゲートから飛び出した。

「おいっ、止めろ!」

 一瞬にして視線がニイトに集まる。

「誰だコイツは!? どこから出た!」

「見張りはどうした?」

 突然の闖入者に野菜魔人たちに動揺が広がる。それを制してニイトは続ける。

「お前たちにも言い分はありそうだが、ここは一つ穏やかに話し合いから始めようじゃないか」

 しかしナス魔人は恍惚とした表情のまま腰を振ることを止めない。

「おいっ! だからそこのナス野郎! その限りなくアウトに近いセウトな動きを止めろって」

「うるさい! 今いいところなんだ、邪魔をするな! ハァハァ……」

「別のやり方にしろよっ! その絵面はいろいろマズイんだよ」

「ハァハァ、これが一番気持ちいいオシオキの方法なんだから、しかたないだろっ。俺たちは本能に従っているだけだ」

 聞く耳を持たない。

「誰だか知らねぇが、やっちまえぇぇぇ!」

 結局、戦いになってしまった。


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