表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界創世記  作者: ねこたつ
1章 幕間
21/164

1-20

 さて、トイレ問題は解決したものの金欠状態は悪化したので、ニイトは資金稼ぎに四苦八苦していた。できることと言えば自分の知識を少女たちに伝えて、より付加価値の高い物を生み出してもらうしかない。

「ほら、こんな感じで握り棒と尖らせた石を縄で巻いて固定するんだよ。そうしたらもっと楽に石を振り下ろせるだろ?」

「ほんとだぁ~。石を握っただけのときよりも、強い力が出るよ」

 学問的なことはわからなくても、テコの原理や遠心力などの力を少女たちは体感的に理解していた。まるで真綿が水を吸収するように、一を教えれば十を学んでしまう少女たちの学習能力に驚く。

 しばらく観察すれば、石斧や石のハンマーを次々に作り出し、どうしたらもっと使いやすくなるかを相談しあっている。

 そうして作られた道具を用いて、今度は以前よりも複雑な木材加工に挑戦していく。

「う~ん、う~ん」

 一人の少女が木材の前で猫耳をよじらせながら唸っていた。

「どうしたんだ?」

「木をくっつけたいの。持ち上げるとすぐに外れちゃうの」

 少女が手を加えた木は紐で縛ったが解けてしまったような痕跡が見て取れた。

「なるほど。ちょっとこれを見てごらん」

 ニイトは枝分かれした木の枝の皮を剥いで、さらに縦に割る。すると木の繊維や節がよく見えるようになった。

「木の枝って少し幹の内側から出てるんだよ」

「少し、木の中に…………ハッ!? それなのっ!」

 少女は元気よく猫耳を立てて作業に戻った。今度は木の幹を少し削って組み合わせてから縄で巻く。すると摩擦力が増して強度が上がったのだ。

「できたぁ! ニイトさまのおかげでできた。ありがとうなの!」

 弾ける笑顔を見て、ニイトもまたつられて笑う。

 自分も負けちゃいられないなと、少女たちに混じって工作に励む。植物のつるを編んでカゴを作ったり、木と石を組み合わせて天秤を作ったり。

 思いつく限りのものを作ってはポイントに還元していく。

 そうして次の売却時、すぐに努力は報われる形になった。


 ――質の悪い靴紐     4束 売却額……765ポイント。

 ――壊れた釣竿(針なし) 1竿 売却額……320ポイント。

 ――火きり弓       1つ 売却額……250ポイント。

 ・

 ・

 ・

 ――――売却額 合計 2125ポイント。


(おぉ!? 儲かった!! いける! これはいけるぞ!)

 2000ポイントで買った廃材が2125ポイントで売れた。驚くべき成長力。

 たった僅かな利益だがニイトは確信する。この作戦は成功すると。少女たちの暇つぶしにもなって、さらに儲かるなんて理想的じゃないか。

「みんないいぞ! 少し儲かったから、今度はもう少したくさんの廃材をあげよう!」

 気をよくしたニイトは、奮発して1万ポイント分の廃材を購入。

 ガラクタの山が生まれるなり、少女たちは目をハンターのように光らせて我先にと飛びついた。


 日が落ちる頃にはそれぞれの作品を完成させていた。

 どうやらこのキューブという空間は昼と夜の区別はあるようだ。

 一日中工作を行っていて、そろそろ披露の色も見え隠れする。もっとも少女たちは猫のように疲れるとその場で寝てしまうので、あくまで頭脳や精神の疲れにすぎないが。

「よし、今日はこのくらいで終わりにしよう。続きはまた明日な」

 さて、今回の成果であるが、1万で購入した廃材が1万3000以上で売れた。

 少女たちの技術が上がった分だけ、確実に売却価格に影響している。しかもこれからも使えそうな道具を除いてだ。

「みんな、お疲れさん! 頑張ってくれたので、俺からご褒美があります」

 ノアに頼んで安い品物をたくさん表示してもらう。いつものごとくシャボン玉のようなディスプレイにして広場に浮かべると、少女たちは食いついた。

「どれでも好きなものを一つ選んでくれ」

 100ポイントくらいのたいして価値のない物ではあるが、色のついた石や派手な鳥の羽など、初めて見る少女たちにとっては好奇心を刺激されるようなものを中心に揃えた。

 どれにしようかと目移りしている彼女らを見ていると癒される。誰もがとても純粋な目をしているから。

 それぞれが選び終わり、入手したアイテムを手にとってキャッキャとはしゃぐ。


     ◇


 次にニイトは少女たちを寝室に案内した。

 といっても余った部屋を2メートル四方の枠組みで区切っただけだ。本当は柔らかいベッドや布団を購入したかったが、資金不足で断念した。

 寝ている間に少女たちが腰を痛めないか心配だ。経済力の乏しい自分がふがいない。


□□□ 123 トイレ 空き 空き

□□□ 456 畑 キノコ  空き

■□□ 789 石版 庭  <寝室> ←NEW


「なあ、マーシャ。前の世界ではどうやって寝てたんだ?」

「特に寝る場所は決まってなかったですね。結界内の好きな場所でごろ寝してました」

「腰を痛めたりしなかったか?」

「猫人の特性で、起き抜けに柔軟体操をするとからだがほぐれるので問題なかったです」

「それは、便利な種族だな」

 ならば寝具は後回しにしても良いかもしれない。でもできれば快適な寝床を用意したいな。特にニイト自身は石版部屋の固い地面で寝ていると、起床時にからだが痺れたり骨が痛かったりするのだった。

 こうして、一日目は過ぎていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ