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異世界創世記  作者: ねこたつ
6章 幕間
142/164

6-13(2/4)


 さて、そうしてたっぷりと仕入れた道具や素材を持って、今度はオリヴィアの故郷へ向かう。


「いつも通り、マーシャには販売をお願いするよ」

「にゃ。今日も完売を目指します」


 中央区の市場に場所を借りて、定期的に露店を開いている。

 高性能な道具を美人売り子が販売しているとあって、集落では大変な人気だった。


「お! やっと店開きしたな。待ってたぜ。さっそくだが、ノコギリはあるかい?」

「もちろん用意しております」

「薙刀って入荷してる?」

「オレは小手と脛当てが欲しい」


 虫製の武具や道具の需要が尽きないので、じゃんじゃん売りまくる。


「はーい、押さないで。ちゃんと並んでくださいね」

「おや? 珍しい料理があるね。一つもらおうかしら」

「串焼きですね。鉄竹8枚になります」

「これは見慣れない果実だね。食べられるのかい?」

「はい。スイーツカボチャといって、じっくり焼くと濃厚な甘さが出て美味しいですよ」


 アンナ店の売れ残りやキューブで作りすぎた料理なども珍しいのでよく売れる。最近では野菜もちょくちょく売って広めている。人気が出ればここも良い取引先になるかもしれない。

 マーシャに店を任せている間に、ニイトはギルドへ向かう。


「こんちゃーっす。ゴミ処理の仕事を請けに来ましたよ」

「はいはい、お待ちしておりました。現在のゴミの量からして、報酬は銀竹6枚ほどになります。よろしいでしょうか」

「問題ないです」


 ギルドでニイト専用の依頼を受注する。

 今まではゴミを川に捨てていたせいで下流のほうで詰まってしまうことがたびたびあったが、これを集落の片隅に集めることになった。

 そしてそれをニイトがあーくんで丸呑みにするというわけだ。虫世界ほどではないが、結構ポイントが稼げる。ときどき掘り出し物が混じっていて美味しい。さらにこの世界の貨幣である竹銭まで稼げるので一石二鳥、いや三鳥四鳥の働きだった。


 さくっとあーくんで処理して依頼の完遂を報告。これだけで日本円にすると6万円ほどの収入になる。ボロすぎる。

 その足で集落の外れにやってくると、外周に沿って流れる川の水をあーくんで大量にキューブの一室に【転送】する。あとでマーシャの広範囲【解毒】をすると飲んでも大丈夫な水が手に入るのだ。


 そのまま川を渡って西域一帯に広がる竹やぶへ向かい、100本ほど竹を一気に伐採。あーくんで【解体】して竹銭と竹材を入手。竹銭は竹の頂上に必ずついていて、価値はランダム。100本刈ると期待値では銅竹3枚弱(約3000円)ほど入手できるが、運がよければその何十倍もの額を入手できることもある。ちょっぴりギャンブル要素のあるところが面白い。

 竹筒は魔法処理をすればお風呂のパイプとして使えるかもしれないし、今回は多めに採取した。


 手に入れた竹を炭焼き小屋へ運ぶ。


「ニイトさん、お疲れさまです」

「また竹取ってきたよ」

「いつもすみません」


 オリヴィアの友人のウンナイとツキナイが炭窯を噴かせている。この炭窯はドニャーフの技術を輸出したもので、技術を教える代わりにできた竹炭の1%くらいを毎回もらえることになっている。そのお礼というわけではないが、竹を伐採して運ぶ時間を短縮するために、ときどきニイトは竹を調達しているのだ。


「こちらに約束の分と、売れ残ったものがあります」

「今回も売れ残りは全部買わせてもらうよ」

「いやー、ありがたい! 作った分は売れ残っても全部ニイトさんに買い取ってもらえるので、オレたちは赤字というものを知らないんですよ」


 二人は屈託なく笑った。いかにも運の悪そうな名前の二人だが、ニイトと出会ってからはツキが向いてきたようだ。

 ここで仕入れた竹炭は巨蟲世界や野菜世界などに輸出されるのだ。


 オリヴィアの屋台には野菜とソースを毎朝ノアが転送しているので特に卸すものはないだろうが、不足しているものがあれば補充する。売れ残りは当然全て買い取っている。ニイトが関わった飲食店には廃棄という二文字は存在しないのだ。


 屋台のロイヤリティーと露店の売り上げを使って今度は木材やプラテイン肉を仕入れる。特にプラテインはここでしか手に入らないのであるだけ買い占める。

 そのためにオリヴィアの店にあーくんの機能を使用した買い取り場を設けてもらっている。箱に入れると査定が行われて、ストックしておいた竹銭が自動的に支払われる仕組みだ。肉が腐る前に入手したかったので、少々維持費がかかるが転送ボックスとして常時待機させている。


 プラテイン肉以外にも珍しい植物やハーブの種などもあればどんどん買い取るし、ここでも金はできるかぎり市場に回す。農家や職人街を回って、売れ残っているものがあれば買い漁る。少々安値になっても売れ残るよりは彼らにとっても良いはずだ。


 ルーチンワークをこなしたニイトはマーシャとオリヴィアを連れて森へ出かける。浴槽や風呂桶などに使う良質なヒノキを伐採するためだ。やはりまずはヒノキ風呂だろう。


     ◇


 虫製道具の輸出先は植獣世界だけではない。

 野菜世界でもひっぱりだこなのだ。

 野菜世界には虫製道具、土器、調理道具、竹炭、服、紙、羽ペン、塩、ハーブの種などを卸している。特産品としてソース作りを始めたピーターの村では塩の需要が高いので、キューブで【購入】したものを売っている。ハーブ類は野菜の生育を助けるコンパニオンプランツの効果が認められたので、こちらも売れ行きは好調だ。


 この世界では通貨がないので物々交換が基本となる。おもに果物と野菜とソースだ。なかでも野菜はベジターを始めとした野菜魔人たちによる監修のもと、集落の周囲に新たに開拓された畑で自家栽培しているので品質がすこぶる良い。

 いわゆる高級野菜というやつだ。ときどきレア表示のある野菜までもが採れるようになっていた。


 とは言っても与える物と受け取る物のバランスはまだ取れていなくて、ニイトのほうが大幅に損をしている状況が続いている。

 しかしそれでもニイトは構わないと不利な交換を続けた。すると最近になって紙とペンを卸したことがきっかけとなって、絵や詩を書き記す文化が生まれた。これをキューブに持ち帰って猫娘たちに見せると、異世界の情報が詰まっていると大変に好評だった。


 さっそくドニャーフたちもキューブ内の絵や詩を書いて返信した。するとまた野菜世界から新たな紙が届く。こうして紙媒体を通じた情報や文化の交換がなされるようになったのだ。これによって猫耳たちのインスピレーションが刺激されて、クラフトの可能性が広がった。

 不平等な交易が投資の役割を果たして、新たな産業が生まれたわけだ。




 不平等な交易と言えば同じくアダムの原始世界もだ。卸す量に比べて受け取る物が少ないが、アダムからは貴重な米をもらった。現在、目下栽培中で本格的な生産が始まれば多くの富と利益をもたらすことだろう。また、アダムからは少量だが狩った動物の毛皮を譲り受けることもある。何気に毛皮は今まで入手してこなかったので貴重な資源だった。


 マーシャと二人で原始世界を探索をしていると、岩石地帯へ辿り着いた。


「ニイトさま、この石って表面がつるつるしていて、触ると気持ち良いです」

「本当だ。なめらかな手触り。強度も高い。これ、お風呂の床材とかに良さそうだな」


 大理石のようなつるつるした岩盤がむき出しになっていたので、ありがたく【範囲転送】でごっそり頂いた。

 人の数が少ないのか、手付かずの自然が溢れているこの世界は資源の宝庫である。管理者も支配者もいないので取り放題。うん、おいしい。


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