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無駄に長くなったので分割します。
アダムのいる原始世界へ行き始めたニイトはたびたびマーシャと長風呂をするようになった。そのことが原因で、少女たちからちらほら不満が出始める。
お風呂の時間が遅れる。マーシャお姉さまだけ一緒でずるい。一緒に入りたい。背中をお流ししたい。むしろからだを洗ってもらいたい。しっぽも洗ってほしい。最終的にはしっぽを咥えてほしい。
いくつかの意見、というかほとんどは判断に迷うものだったが、お風呂部屋が一つしかなくて狭いのは確かに問題だ。
ということで、浴場を改築することになった。
いつものごとく教室にみんなを集めてニイトは宣言する。
「みんな集まったな。今日から風呂の大改築を始めるぞ」
「「「にゃぁああああああ!」」」
割れんばかりの歓声が轟いた。
それを見てやはり風呂って大事なんだとニイトは再認識する。一日の疲れを取るにはゆっくりと湯に浸かるのが一番。女の子にとっては美容の為に欠かすことのできないことだし、男の自分が考えるよりもお風呂の重要性は高かったのかもしれないと若干反省する。
ということで、贅沢に金をかけまくった豪華な大浴場に改築するのだ。
「どんなお風呂にするのですか?」
代表してマーシャが聞く。
「まずは全員が入れるような大きな浴槽を作る。それから疲れを回復するための薬湯を別に作って、あとは滝のような打たせ湯とか、ヒノキ風呂とか、サウナとか、お湯の成分ごとに多種多様な湯を好きなだけ作り足すつもりだ」
「ずいぶん大掛かりな計画ですね!?」
「ああ。みんな大きなお風呂に入りたいだろ?」
「「「にゃぉーーーん!」」」
大合唱だ。
「それじゃ、一人ずつ要望を聞いていこうか。どんな風呂にしたい?」
「浅いお風呂で寝そべってみたいニャ」
「逆に足が付かないくらい深いお風呂で泳ぐという手も」
「花の香りがするお風呂がいいです」
浴槽の大きさは? 数は? デザインは? 床や壁の材質は? 沸かしの仕組みは? 水道管の設計は? 照明の配置は?
様々な意見を集めてまとめるとかなり大規模な計画になってしまった。
「思ったよりも大工事になりそうだな。設計はミカに任せて良いか?」
「了解しました」
「石材関係はメイに頼む」
「任せなっ」
「木材関係はキティ」
「頑張るにゃ」
「全体の指揮はロリカにお願いするよ。それと何かと入用になると思うから1000万ほどロリカの口座に振り込んどくから、みんなで使ってくれ」
「かたじけない。承ったのじゃ」
「俺とマーシャは交易で資金と資材の調達に向かおう」
「了解です」
役割は決まった。あとはそれぞれの働きをするのみ。
さっそくニイトとマーシャは異世界交易の準備に取り掛かり、教室をでた。
残った少女たちはキランと目を輝かせる。
「フッーフッー、ニイトさまと混浴、はぁはぁ」
「からだの洗いっこ、にゅふっ」
「入浴にゃんにゃん♪ にゃほっ」
目がハンターの目になっていた。
◇
異世界を股にかけた三角貿易は順調に利益を出している。もっとも既に行ける異世界の数は三つ以上に増えているので三角というわけではないが。
まずニイトが向かったのはアンナの故郷である巨蟲世界。
ここは非常に交易品の多い世界で盛んに取引が行われる。
最初にアンナの店に赴き、不足している物資の補充を行う。
キューブと野菜世界からは竹串・竹炭・野菜・ハーブ・ソース・調味料などを卸す。さらに業務量の石臼の定期メンテナンスも行っている
植物世界からは木材、大豆、小麦、プラテインの肉などだ。この世界で調達できない食材はまだ浸透率が低いものの、一部では人気が高い。現在は販路を持った商人を抱きこんで、徐々に流通量を増やしている段階である。
そして一番売れ行きが好調なのは木材だ。建材として重宝されるのはもちろんだが、それよりもミルワームの養殖用に高値で売れる。
なぜかオリヴィアの世界の木々は成長が早かったが、それを食べて育った虫もまた成長が早く、しかも通常よりも大きく育って味もよくなるらしい。
そんなわけで複数の木材業者が争うように値を吊り上げてくれたので、かなり高騰している。
特に樫の木は人気が高くて飛ぶように売れるので、ニイトはキューブの一画を植林地帯にして量産をはじめた。 オリヴィアの世界ほどではないが、キューブで栽培してもそれなりの効果はあることは実証済みなので、廉価版として大量に卸すことで価格も安定するだろう。
この世界ではさらに定期的にゴミの回収も行っている。ひと月に一度くらいのペースでゴミ収集場に溜まったゴミを全てあーくんで【売却】する。これが毎回100万を越える稼ぎになるので美味い。
そうしてたんまりと稼いだ殻貨を使って、今度は虫素材や道具類を買いまくる。特に耐熱性の高い甲殻系の殻は重宝する。金属よりも軽くて加工がしやすく、耐久性もそこそこあるので非常に使い勝手が良い。
大浴場ための配水管やシャワー作りに役立ちそうだし、今回は多めに調達する。
既製品としては料理道具、工具、鍛冶道具、木工道具、裁縫道具、翅製品、絹製品などを片っ端から購入し、さらに売れ残りや中古・故障品の武器や防具・道具などもバシバシ買い集める。他の世界に売っても良いし、売れ残ったらポイント化すればいい。殻貨をそのままポイント化するよりも、売れ残りの武具や買い手のいない粗悪品のほうが遥かに高値になるのだ。
もちろんアンナの店の売れ残り料理も一つ残らず買い取っている。【売却】値が高いし、他の世界でも需要がある。損は全くない。
どんどん物を買いまくって溜まっていく金を市場に回すことは、経済を活性化させる上で非常に大事だ。
金は貯め込むとそれだけ経済は停滞するのである。それでも金が余ったら無利子同然の条件でどんどん金を貸して投資して発展を促す。有力だと思える職人や施設があれば、場合によってはこちらが損をしてでも投資するくらいだ。
その結果、環境や設備・職人たちの腕もあがって品質が向上していく。すると【売却】で得られるポイントも増えていくので好循環が生まれる。
この世界の貨幣であるゴキブ○の翅になんて何の価値もない。生きた人の営みにこそ価値があるである。
これこそが経世済民――つまり経済活動。健全な金の流れによってみんなが幸せになる、正しい経済のありかたなのだ。
投資をしない限り経済は成長しないのである。←これ大事。テストに出します。




