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閑話一

バーグレイズと魔族との戦争終了後。

戦場となった魔族国境リムトル砦では勝利を納めたバーグレイズ兵士により戦争の後始末に追われていた。


後始末とはリムトル砦の近辺に散乱した魔物や人間の死体の処理。放っておくと肉が腐り死霊化したり疫病を呼んでしまう。


ある炎の魔人によって一角の死骸は炭化してるがまだまだ大量にある。敵味方問わずの死体の処理、意外な事に巨大で片付け難い魔物の死体の片付けが一番の人気だ。

何故なら魔物の死体は兵士にとっては貴重な臨時収入、魔物の死骸は解体すれば素材として売ることが出来る。巧くすれば給料数年分の稼ぎが生まれる。

本来は全て国の物になるが横領が多発した為に暗黙の了解で、魔物素材の一部は解体した兵士のモノになる事になっている。だが個人が持てる量には限りがあり少量で高値で売れる魔物の死体を狙い小競り合いが起きていた。


次に人気なのが魔族の死体。


魔物の死体と違い表だっては商売出来ない素材として魔族は高値で売れる。材料として以外にも魔族は美形が多く死体は頑丈で生前の美しい姿を残してる者も多い。

一部の貴族等が魔族の死体を観賞用の戦利品として高値で買取り、まるで勲章やトロフィーの様に飾る者も居るのだ。

流石に敵で高値で売れるとしても魔族は形が人型に近く、死体を売り物にしたくないと思う兵士も多く魔物よりは人気がない。

まぁ中には率先して売り物として狙う者も居る。中には性欲の捌け口にする者もいる。


逆に一番人気が無いのが仲間の筈の死んだ人間の後処理。


当然だが人の死体は売り物に成らない。それに死体の状態が酷い。戦場と成っていた場所の人間の死体は魔族や魔物の死体と違い柔く、原形を留め誰か解る死体は殆ど無い。

遺品も殆ど誰のモノか判らず稀に遺族に返されるが、殆どの価値の有るものは拾った人間が貰い価値の無いものは適当に一ヶ所に纏められ燃やされた。


殆んど原型を無くした友の前で泣く者。

高値の魔物の素材を獲るために争う者。

影で魔族の女性体、男性体其々の肉体に、吐き気がする様な行為で怒りと欲望をぶつけ凌辱している者。

今は戦っている時よりもある意味混沌としていた。


何日もかけ行為と死体の処理が終わると次に行われるのは、戦後前にはあった敵の襲来を知らせる警報装置の設置に敵の侵入を防ぐ罠の設置。魔族や魔物を警戒しながらの作業。終わるまで数週間か掛かるだろう。


戦いが終わって数日して一部の兵士はようやく帰還する為の準備が始められる事になる。兵士達はようやく帰れるとまだ疲れが抜けてない体で喜んで帰還準備に取り掛かかった。



兵士達が帰還準備をする慌ただしい空間の中、一人作業もせず苛立った様子で木箱に座り酒を飲む男性。


赤いマント付きの真新しい鎧を着た20代前半の大柄な年若い茶髪の男。


兵士達は邪魔な場所に居る男に文句を言いたかったが赤いマントは上位騎士の証、平の兵士では上位の立場に居る男に何も言えず、この男が存在してないように無視して作業を続ける。ただ中には露骨な侮蔑する視線を向ける者も居て男は苛立つ。


ドン!


サボっていた男がクソッと悪態をつき鋼の手甲付きの腕で隣の木箱を殴り箱の蓋の部分が壊れた。


「荒れてるな。ガーバンガ、けど無駄に物を壊すなよ」


同じ赤いマント付きの鎧を着た男が苛立ったガーバンガと呼ばれた男に声を掛けた。年はガーバンガと同年代の赤髪の男。

この男にも露骨な侮蔑な視線が向けられてるがこの男は気にしないかの様に飄々としていた。


「ふんノダンか。お前は平気そうだな」


「なにがだ?」


「何がだと!…胸糞悪くないのか?俺達の下だった奴が完全に本物の勇者様扱いだぞ!それにあの王女殿下!

何もかも終った後に来て!俺達に真っ先に言ったのが、その汚いの何処かに捨ててきてだぞ!!あの王女殿下様が汚物を見るみたいに見てたのは!この国を護るのに最後まで戦って死んだ兵士だ!最低限の敬意ってモノもないのか!!それに……化け物だが国を救った恩人に追い出す前にあの態度は無いだろう!」


ガーバンガは周りに聞こえる様に態とらしく叫んでいる。


「止めとけよ!腹が立つのは良く判るけどさ……色々不味いだろ?」


「ああ……スマン」


ノダンもそう言い自分も賛同してない側だと周りに聞こえるぐらいに話している。


「気にするだけ無駄だろ。アイツの、勇者の態度はそう言う役って割り切れよ。俺達だって役割って面では同じだろう?王女殿下は………雲の上の方だしな。」


「俺達もそうだから我慢しろってか。………ああするよ。命無くす戦場よりは良い職場だろうからな!」


「それにサボっても文句を言われない立場だからな」


ノダンが赤いマントをヒラヒラと揺らし聞き耳を立てている相手を見る。聞き耳を立てていた相手は直ぐに視線を逸らした。


「フン、そうだな。お前も飲まないか」


「飲みたいが止めとくよ。周りの視線が痛いからな。お前も程々にしろよ明日には王都に帰るんだしな。国を魔族から救った勇者パーティの騎士様が酔っぱらったままだと恥を掻くぞ」


勇者パーティなとガーバンガは自嘲気味に笑う。


「最初は只の名前だけだったのが、今では本物の勇者パーティ扱いか」


「そりゃあ俺達が1年戦って貰えた正当な名誉だ」


ノダンは悪びれずにそう言う。


「化も…いや、ほらアイツの名前何だったんだろうな?1年、隠したまんまだったよな」


「仮面のか?さぁな?…何で今更?…気になるちゃ気になるけど…まぁ知っても仕方ないだろ。」


「そうだな確かに今更か。…!?」


ガーバンガは大型の馬車を二台連結させた改造馬車に運び込まれるモノを見て驚愕に目を剥いた。


「お、おいあの魔人の氷像はどうなるんだ?何処かで解体するのか」  


「戦利品として王都に運ぶらしいぞ。飾り物にするらしい」


「は、はぁ!?王都に運ぶ!?飾り物!?あれをか!……だ、大丈夫なのか?呪われそうな気がするが」


「おれもあんなのサッサの叩き壊した方が良いと思うけど王女様が何かに使うらしいぞ」


「あの王女の我儘かよ。何か最悪な予感がするな。」


ガーバンガはそう言いながらも自分の本当の立場を判っているので何も言わず、気味悪げに凍り付いた魔人を見送った。



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