一話
「やっといけた~」
一人のOLはある部屋を借りることが出来、ご満悦の顔をしていた。
条件は和室であること。 その条件を満たしたことにより、一人暮らしを始めることになった。
「やっぱり畳はいいなぁ~」
よだれが垂れそうな笑顔を出しながら、畳の上を寝転がっている。
「あ! 荷物の整理をしなくちゃ!」
OLは立ち上がって、荷物を取りに行く。
大きなダンボールには、河村 美香様と名前が書かれていた。
荷物の整理で、美香はところせましと移動して、荷物の整理をしていく。
そして、整理も終わりの状態に近づいてきて、
「後は、この布団を!」
と言って、布団を持ち上げる。
そして、部屋の押入れに入れた。
苦労したかのように、額に腕を当てて、整理が終わったことを示していた。
「あぁ~やっぱり押入れもいいなぁ~!」
目を輝かせ、布団を入れた押入れを覗き込むように見ている。
「あぁ~! もっとよく見たいから布団をちょっとだけどかそう」
美香は布団をどかし、再び押入れを覗き込む。
すると、押入れの中に一本の髪の毛があった。
美香は、嫌そうな顔をして、
「もう~。 前の住人さんが残していったな」
美香はしぶしぶ髪の毛をゴミ箱に放り込んだ。
これで、綺麗な和室を借りることが出来た。
美香は、その後、風呂に入り、そのまま出した布団を広げて寝た。
寝ているときの顔は、とても幸せそうにしていた。
翌日、美香は布団をしまい、着替えて、いつも通り会社に向かう。
会社に着くと、
「おはよう」
美香に声をかけてきた人がいた。
その人物は、ショートカットで活発そうな女性だった。
「あ! 葉月~!」
美香はその女性を名前で呼び、女性に近づいていった。
「美香。 いい部屋あった?」
「あったよ~。 私好みの部屋が!」
美香はロングヘアーの髪を揺らしながら、嬉しそうに答えた。
「お! あったのか~。 今度泊まりに行ってもいいかい?」
「ぜひ!」
「よし! 同僚同士、水入らずで飲もうね~」
「うん!」
そして、会社の業務を終え、家に帰る。
愛しの和室へ向かう。
「はぅ~! 最高!」
美香は最愛の畳で寝そべっていた。
「あ! 布団直すの忘れてた」
美香は立ち上がり、布団を直そうと押入れを開けた。
そこで目に入ったのが、
「また髪の毛」
髪の毛が落ちていた。
今度は、一本ではなく、二本に増えていた。
美香はため息をついて、髪の毛をゴミ箱に捨てる。
「もぅ~。 なんなの」
少し不機嫌そうに言いながら、布団をしまう。
この不思議な現象はしばらく続いた。
しかも、髪の毛はどんどん増えていく。
まるで、増殖をしているみたいに……。
葉月と部屋で飲んで、布団を出そうとしたときも、髪の毛があった。
美香はもう気に留めようとしなかった。
葉月が帰った後、美香は布団を出した。
それから、しばらく押入れを開けようとしなかった。
髪の毛が目に入ってしまうからだ。
それなら、しばらく布団を出しておこうと思った。
これなら、髪の毛のことを考えずに済むからだ。
それから、数ヶ月が経過した……。