表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この青い空から  作者: 湖沼 弥音
Prologue
8/40

もうすぐ夜が明ける。

明るみ始めた空を眺めながら二人は堤防に座っていた。


なんとなくまだ戻りたくなくて。

もう少し人間気分でいたかったから…。


「私もあんなふうにみんなに喜ばれて生まれて来たのかな」


空を見つめながら希楽がつぶやく。


「ああ、そうだな…。それから十数年しか経ってないのにこんな所にいる…」


「うん…。私あんまり親が好きなわけじゃなかったの…、

別に何があったって訳じゃないけど。

尊敬するのは両親なんて何で言えるんだろって思ってた」


挿絵(By みてみん)


「あー、俺も」


「ホント普通だったと思うの、フツーの家庭。


——————————————————————–

「でもね、今になって考えるとやっぱり大切にされてたんだなーって思っちゃった。

生きてる時なんて邪魔だとか思っちゃったりしちゃったのに…。


なんで今更気付くんだろうね…」


「そういうもんなんじゃねぇの?人間って。他にもいっぱいあるよな。後で気付くことって」


「うん。いっぱい。何で死んじゃったんだろ…私」


「…うん」


かけるべき言葉が見つからなくて、咲斗はそう答えた。

きっと、希楽も自分と同じ気分だから。あえて言葉は必要ない。


(ほんと、ゴメンな…母さん。こんな息子で…)


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「でもさ、俺達、完全に死んじゃったわけじゃないじゃん?まだ。

これから少しだけでもやりたかったこと出来るチャンスが

あるってことだと思わねぇ?」


ふと、そんな考えが浮かんで、口にしてみる。


「うん。でもね、私の一番したかったコトは、恋愛だからなぁ…」


少し、笑顔になって希楽が答える。


——————————————————————–


「あっそ…。俺は対象じゃない、てワケか;」


「あんただって、対象になんてなりたくないでしょ?

じゃなくて、私、人間不信だから…。すぐには人なんて 好きになれないの…」


「そっか…、残念。せっかく近くに女がいるってのに」


いたずらっぽい笑みを浮かべて笑う咲斗。


「もうっ。女だったら誰でもいいんでしょ。サイアクっ」


「当たり。生きてる時は結構プレイボーイって評判だったな」


「…それはウソだね。そんな人じゃないと思う。案外片思いな 子とかいたんじゃない?」


「っ…。いねぇよ。まあ、死んだときは彼女いなかったのは 本当…だけど」


「ホラ。嘘なんてすぐバレるんだからやめなさいよ。」


「ゴメン、ゴメン」


軽い気持ちで、希楽の肩を叩こうとして。

触れる直前に、希楽の身体がびくっと強張る。


——————————————————————–

「あ…、ごめんな…」


こんなふうに、人に触れられることさえ苦手なのか、彼女は。


少しだけ、打ち解けたと思っていた、希楽との距離が、また

遠く感じた。


(こんなまま死んだんじゃあ浮かばれないよな…。まあ、

浮かばれないのは、俺も一緒だけど…)


「ううん。私こそ。ごめんなさい」


「気にしてないよ。俺がガサツなんだよな、そういうの。

女の子は繊細だってのに」


「私が神経質すぎるだけだから。ダメだなあホント」


「またそんな風に言うだろ、お前は…。さ、そろそろ戻るか」


「そうだね」


(こんな風に気を利かせてくれる人のどこがガサツなんだか…)


希楽は、そんなことを考えながら咲斗の後をついていった。

咲斗の背中と、青い空を眺めながら。


——————————————————————–


「2人ともお疲れさま」


空へ戻ると里空が笑顔で迎えてくれた。


「初仕事は、ちゃんと出来たのかな?」


「当たり前ですっ。いくら新米でもあれくらいできますよ」


希楽がふくれる。それを見て里空は笑う。


「もうっ。何で笑うんですか!」


「ごめん、だって希楽ちゃん可愛いんだもん☆」


「もん☆じゃないですっ」


怒りながらも少し心が軽くなった気がした。


「案外元気そうだな。もっと落ち込んで帰って来るかと思ったのに」


2人のやりとりを見つめながら、雅貴が咲斗に言った。


「思いっきりヘコんでますよ。現実を突き付けられて…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ