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この青い空から  作者: 湖沼 弥音
bright future
37/40

前日までの肌寒さとは打って変わり、暖かい日差しに包まれる中、輝たちは無事卒業式の日を迎えた。何より嬉しかったのは、クラス全員が揃ってこの日を迎えられたことだ。


あの日から今日に至るまで、学校はかなり慌ただしかった。幸い浜野の火傷は軽く済み、検査入院を終えた後すぐに学校へ復帰することが出来た。炎の中へ飛び込んで行った行動に関しては、沢山叱られたそうだけれど、一人の命が彼によって救われた事には違いない。


来桜の方は、殴られた怪我や小さな火傷こそあったものの、火事によるダメージは少なかった。足を縛られ、床に転がった状態だったことが幸いして、吸い込んだ煙の量も最小限で済んだらしい。

とは言え、彼の回復を最優先する為にも入院は必須で、卒業式前日に退院できることが病院からの最大限の譲歩であった。


「来桜!久しぶり。もう大丈夫なのか?」


見舞い以来顔を会わせていなかった来桜を皆が取り囲む。


「うん。心配かけて悪かった。だいぶ落ち着いたよ」


「落ち着いたって……。ただ単に良かったなんて言えないよ……」


輝が返す言葉に詰まる。来桜が助け出された時の状況から、虐待の疑いがかかり、伯父達は逮捕されたと聞いている。来桜の痣については輝たちも証言した。日常的な虐待についても調査が進められるらしい。 

今日、彼が身に付けているのは進学先の中学の制服だ。隣の県にある全寮制の中学校。様々な人と相談した結果、来桜が選んだ進学先だ。


「そこは、頑張ったねって言っといてくれ」


少し困った表情で頬を掻きながら来桜が答える。サラッと出てきた辺り、自身も何と言おうかずっと考えていたのだろう。


「来桜っ、お前ってヤツは」


皆に抱きつかれ、来桜は更に困惑する。


「やめろよ。式の前から泣いちゃうじゃん」


「来桜~!!」


「感動の再会はその辺にしておこうか。大森。よく来たな」


姿勢を正すと、来桜は礼儀正しく挨拶をした。


「浜野先生。おはようございます」


「ああ、おはよう。全員出席だな。さあ皆、席につこうか」


浜野の声に皆が席へと戻る。彼らの表情が少し大人びて見えるのは緊張のせいだけでは無い。これからの未来へと足を踏み出す決意の表情だ。

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