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この青い空から  作者: 湖沼 弥音
detained artist
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19

「これはやっぱり佑那から皆さんへのメッセージなんです。I love Pleasant Noise.」


「Iの次はハートマークで、最後ギザギザはノイズマークです。これ私たちファンが使うPleasant Noiseを表すマークなんです!!」


……。皆が黙って文字を見つめていた。


「そうか…。これが佑那が俺たちに残そうとしたメッセージか」


晴貴が静かに言う。


「最後だと思って?その時にも僕たちのことを考えてくれてたんだ」


和巳も文字に触れながら呟く。


「ハートって。女子高生かよ…ったく…。佑那!!俺たちだってお前のこと、Pleasant Noiseのことも大好きだぜ!」


幹也がベランダから叫ぶ。


「俺だって…!!」


思わず何か言おうとした佑那の姿が突然消える。

同時に12時を告げる時計の音が聞こえてくる。


「どうなったんだ…?これで合ってたのか?」


叶を振り返る咲斗に向かって、希楽が答える。


「大丈夫だよ。私もあの文字を見て同じことを思ったもん。ファンの子なら皆そう読むはずだから」


「うーん。最近の若者だなぁ。僕にはさっぱりだったよ。ね、雅貴?」


「俺はすぐわかったけどな」


「もう、こんな所で見栄を張ってもしょうがないだろ」


強がって見せる雅貴に吹き出す里空。

そんなことをしているうちに、晴貴の携帯が鳴る。


「はい。松田マネージャー…うん。本当に!?佑那の意識が戻ったって!!」


「っしゃぁ!」


歓喜の声が部屋に響く。


「今から病院に向かうよ。うん。じゃあ後で」


電話を切り、晴貴は由菜を振り返る。


「由菜ちゃんも一緒に行こう」


「え。でも私部外者だし…」


「何言ってんだ。あんたがいなけりゃ、佑那は助かってないぜ。本当に感謝してる」


車のキーを出しながら、幹也が由菜の腕を引く。


「そうだよ。アイツより先に知り合ったこと、佑那に自慢してやろうぜ」


和巳も笑みを浮かべながら由菜を手招きする。


「うん!」


由菜はとびきりの笑顔で答えた。


「良かったですねえ。これで彼らの曲がまた聞けますね」


叶はのんびりとそう言った後で、事後処理があるからと里空から書類を受け取ると帰って行った。


「よかったね、元に戻れて」


もう佑那のいない空を見つめながら希楽が言う。


「死んでない魂の世話など100年に一回あるかどうかのはずだ。今回戻れたのはは特殊なケースだっただけだぞ」


雅貴がそう付け加える。


「そっか。佑那は死んでなかったから戻れたんですよね…」

 

希楽が複雑な表情で返す。


はっきりと思っていたわけではなかったが、自分が戻れることは無いのだという事実を突きつけられた気がした。


「本当、こんなケースは珍しいよね。仕事する上で、良い経験になったよ」


里空がやんわりフォローを入れる。


「良い経験…だったんでしょうか。俺はやっぱり佑那のこと羨ましいと思わずにはいられなかった」


咲斗が絞り出すような声で言った。

希楽もその言葉にハッとする。


そうだ。羨ましかったんだ。


「それが当然の気持ちだと思うよ。そうじゃないと君たちは今ここにいないもの」


君たちじゃなくて、僕たちか、里空が苦笑しながら付け加える。


「じゃあ俺たちは未練がなくなったらどうなるんですか?」


「佑那と行った天界の門があっただろう?あの扉が開いて見える。開いて見える魂だけが通れるんだそうだ。それでこの人生は正真正銘の終わり。転生の準備に入ることになる」


咲斗の質問に雅貴が答える。

先ほど佑那と行ったときは確かに門は固く閉ざされていた。


「心配するな。俺がお前達皆が門を通るまで見届けてやるよ」


雅貴が意地悪く笑いながらそう言う。


「そんな勝手なこと約束しないの。先のことはわからないじゃないか」


嘆息しながら里空が言う。


「でも君たちにも言っておくね。おそらく僕が君たちと一緒に居られるのはあと少しだ。僕ははっきりと自分の未練が何なのか自覚している。そして、それは近いうちに解決する」


昨日は寒かった気温も今日は幾分穏やかだ。


春が近づいていた。

今回でdetained artistは完結です。


佑那たちの設定は随分前に考えていた別ストーリーのもの。それを今回この青い空から用にアレンジして使いました。その名残で少し謎解きっぽい展開になっています。


次回からは四人それぞれのストーリーに踏み込んで行く予定です。お時間の許す限り、お付き合いお願いします。


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