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あの時外へ飛び出した子猫を追いかけ、ベランダへ出た。
猫は隣のベランダの室外機の上で困ったようにこちらを見ていた。
迎えに行こうと柵を乗り越え、細い足場を踏み外したのだ。
「なんだよ、お前自分で戻れんのかよ」
由菜に抱かれている子猫に向かって佑那は苦笑する。
足を踏み外し、咄嗟に柵を掴んだものの自力では上がれそうもなかった。
佑那は自分の指を噛んで足場に文字を残した。
あの文字は確かに最後の力を振り絞って書いた彼らへのメッセージだった。
「何なんだこれ。もう時間がないぞ!」
幹也の焦った声が聞こえる。
「初めの文字は1なのか?英語? Iか…?」
晴貴も口に手を当て、まばたきも忘れて文字を見つめている。
「I v…I have…。いや、落ちそうになった佑那が咄嗟に描いたんだとしたら、難しい言葉じゃないはずだ。最後の文字も波線…というよりはギザギザしているし。文字…?記号?」
和巳も頭をフル回転させる。だが、制限時間に焦るあまり、なかなか考えがまとまらない。
「わかった…」
そんな中彼女の声が響く。
皆が由菜の方に注目した。