14
『nighthawks』
「ナイト…??」
きょとんとする由奈に晴貴が説明する。
「近所にあるバーだよ。俺たちが打ち上げや飲みに行く時は大抵そこへ行くんだ」
次の目的地はPleasant Noise全員と関係がある場所ということか。
「しかし結構な時間だぞ、もう。嬢ちゃんは大丈夫なのか?」
幹也が腕時計を見ながら尋ねる。時間は10時半を回ろうとしていた。
「一人暮らしですから。最後までつきあわせてください」
「一段落ついたら俺が送っていくよ」
由奈の決心が固いことを感じ取り、晴貴が承諾する。
大通りから少し外れた所にその店はあった。穏やかな灯りが店内を照らしている。
「タケさん、今大丈夫?」
幹也がドアを少しだけあけて店内を覗き込む。
「よお、幹也か。大変なことになってるみたいだな。」
声がして、店の中から頭にバンダナを巻いた店主らしい男性が出て来た。
「今日は誰もいないよ。中に入んな」
そういって晴貴達を招き入れ、ドアのところにかかっているプレートをclosedに変えた。
希楽たちもこっそり店内に入る。中は薄暗い灯りの中ジャズが流れている。店内にはカウンターとテーブルが3つほど。
Pleasant Noiseの三人は慣れた様子でカウンターに腰かける。店主一人でやっているようだ。店には他に誰もいない。とりあえず何か食べろよ、とポテトを出してくれた。
「俺はこの店をやってる武則ってんだ。で、こちらのお嬢ちゃんは?」
武則に声をかけられ、由菜はハッと立ち上がる。
「はいっ、高城 由菜と申します。YUNAとは…えっと、ネットの友人で」
「タケさん、俺たちは今佑那がなぜこんな事になったのかを探してるんだ。彼女は、佑那がPleasant NoiseのYUNAだとは知らずに親しくしていた子で、今日一日佑那の行きそうな心当たりの場所に着いてきてもらった」
和巳がざっくりと説明する。叶との賭け云々は今は必要ないと判断したようだ。
「あの佑那がねぇ…」と武則は小さく呟いた。