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季節はずれなこともあり、海には誰もいない。
近くに車を止めて、四人は砂浜へやってきた。丁度日の入りの時刻が近づいており、空が赤くなりはじめていた。
「あんた、死んだ日にもここへ来たのか?」
咲斗が波打ち際で、自分の身体を波に透かせて遊びながら、佑那に声をかける。
「…わかんねー。でもここにはよく来てたんだよ。この時間、空にグラデーションがかかる瞬間が好きだった。」
佑那は答えながら、階段のところに腰を下ろすように座った。
「桜海岸の夕日か…」
「!!」
ちょうど佑那のすぐ隣に晴貴が座る。
「なんで…?見えてない…よね?」
「うん、僕たちの姿は見えないはずだよ。」
驚く希楽に里空もそう答える。
当の佑那は一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに苦笑する。
「かなわねーな、晴貴には。」
晴貴はそのまま由菜たちに向かって話し出す。
「俺、ここに佑那と来た事あるんだよね。デビューが決まってすぐくらいに。佑那を拉致ってここに座って二人でこれからの話をした。」
つまり、佑那がその場所に座ったのも、隣に晴貴が座ったのも偶然ではなかったのだ。
「佑那は俺のワガママにつき合ってくれて、Pleasant Noiseに入ってくれたから。ありがとうって。そしたら、何言ってんだって怒られたな。素直じゃないんだからあいつも。」
笑ってはいるものの、晴貴の悲しみが隠しきれない表情に、見ているほうの胸が痛くなる。
「その時も、こんな紫と赤のグラデーションの夕焼けで、佑那はこれが好きだって言ってたな。 今まで忘れてたよ。」
「バカが。いらねーことまで覚えてんじゃねーよ…。ありがとうを言わなきゃならねーのは俺の方なんだから。」
こんな俺に、居場所を与えてくれてありがとう。
今はその声も届かないけれどーー